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自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【1297冊目】観山正見・小久保英一郎『宇宙の地図』

宇宙の地図

宇宙の地図

宇宙のモノサシは、対数でできている。

本書は、東京三鷹にある「国立天文台」を地面から見上げる写真ではじまる。ページをめくると、次は10メートル上から天文台を見下ろす写真。次は100メートル(10の2乗)上からの空撮。次は1,000メートル(10の3乗)上からの、三鷹市一帯の航空写真。次は10,000メートル上から、次は100,000メートル上から……。

こんな具合に「10のX乗」上から見ていくと、なんと「10の27乗」で宇宙の果てに至る。いや、正確には現時点で観測しうる宇宙の果て、つまり137億年「前の」宇宙、なのだけれど。本書はこの「10の1乗」から「10の27乗」までの対数単位で、ひたすら宇宙を「空撮」した本だ。

もちろん実際には空撮などできるワケがないので、地球からの宇宙写真やCGも組み合わせているのであるが、それにしても驚かされるのは、対数(10のX乗)というモノサシで見ると、途方もない広さの宇宙の果てまで、たった27枚の写真で届いてしまうということだ。そして、この27枚を一挙に見ることで、われわれは宇宙のとてつもない広さを、文字通り「体感」することができるのだ(もっとも、イメージしようとしても、あまりのスケールに脳がついてこない)。

この本を見れば、地球、あるいは太陽系、あるいは太陽系の所属する天の川銀河そのものが、いかに宇宙全体からみれば「吹けば飛ぶような」存在であるかが、理屈ではなく感覚で理解できる。銀河が「星の数ほど」散らばっているシーンなど、あまりのスケールのでかさに打ちのめされること請け合いだ。

「時空」という感覚もまた、本書を見ると素直に入ってくる。われわれが今「見えている」星の光は、ずっと前に発したものが、今届いているというだけなのだ。月の光は1.27秒前。太陽の光は8分20秒前。太陽にもっとも近い恒星であるケンタウルスα星は4年前。アンドロメダ銀河は230万年前……。つまり宇宙のスケールでは、「遠くを見る」ということは「昔を見る」ということを意味する。したがって、宇宙の果てを見るということは、必然的に「宇宙の始まりを見る」ということなのだ。

そして、本書にはまた、超新星爆発や星形成領域、暗黒星雲銀河団などの「写真」も、大きなサイズでたっぷり収められている。これがまた、息を呑むほどの美しさのオンパレード。いつまでも見とれていたくなるすばらしい写真ばかりで、こういうのを見ていると、日常のせせこましい悩みや苦しみがバカバカしく思えてくる。

仕事や生活の悩みに追われた時は、こんな本で現実逃避をするのもアリかもしれない……いやいや、そうではない。むしろこれこそが本当の「現実」、われわれのいる宇宙そのものなのだ。宇宙の広さを知ることは、われわれの卑小さを思い出すということ。われわれが何をしようと、それによって日本や地球がどうにかなることはあるかもしれないが、宇宙は変わりなく存在し続ける。太陽だって50億年後にはなくなるのだ。そんな当たり前のことに、なんだか妙にホッとさせられるのは、私だけだろうか?