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自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【1283冊目】柴田元幸編訳『どこにもない国』

謎・恐怖・幻想

どこにもない国―現代アメリカ幻想小説集

どこにもない国―現代アメリカ幻想小説集

柴田元幸氏が編んだ、現代アメリカ幻想小説のアンソロジー。

読んでいると、そうか、アメリカはスティーヴン・キングやディーン・クーンツのみならず、ポーやラヴクラフト、あるいはブラッドベリを生んだ国でもあったのだなあ、と思いだす。歴史や文化の地層が浅い分、想像力を羽ばたかせる余地が大きいということなのか。本書に収められている作品も、きわめて「変わった」小説ばかりであり、同時に忘れがたいファンタジーをこちらにもたらしてくれるものばかり。

エリック・マコーマック「地下堂の査察」は、読んでいてカフカを連想した。ピーター・ケアリー「Do you Love Me?」は、誰にも愛されていない人やモノが次々非物質化していくアイロニックな世界観。ジョイス・キャロル・オーツ「どこへ行くの、どこ行ってたの?」は戯曲にしてもよさそうな逸品。本書の中ではもっとも現実に近いが、それでいてもっとも「怖い」。

ウィリアム・T・ヴォルマン「失われた物語の墓」がポーに捧げるオマージュ的かつモザイク的作品だとすれば、ケン・カルファスの「見えないショッピング・モール」のほうはカルヴィーノ『見えない都市』(現在読書中!)をパロった傑作。よくできている。唯一既読だった作家レベッカ・ブラウン「魔法」の常に正装した「彼女」はいったい何のメタファーなのか。スティーヴン・ミルハウザー「雪人間」は少年の目が活きている傑作短編。すばらしい。

前から気になっていた作家ニコルソン・ベイカー「下層土」はなんと前代未聞のジャガイモ・ホラー。ラストのケリー・リンク「ザ・ホルトラク」は、コンビニとゾンビ、「聞こ見ゆる深淵」の取り合わせにいかにも現代的な幻想感覚が満ちており、今まで味わったことのない素材の組み合わせ、という印象。

個人的にはオーツ「どこへ行くの、どこ行ってたの?」とミルハウザー「雪人間」が好み。特にミルハウザーはそのうちちゃんと読んでみたい。それにしてもこういう短篇ばかりを見つけてセレクトする柴田氏の「目」はやはり極上である。すばらしい。

マルコ・ポーロの見えない都市