自治体職員の読書ノート

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【1281冊目】松岡資明『アーカイブスが社会を変える』

アーカイブズが社会を変える?公文書管理法と情報革命 (平凡社新書)

アーカイブズが社会を変える?公文書管理法と情報革命 (平凡社新書)

以前、同じ著者の『日本の公文書』という本を読んだが、本書もほぼ同じようなテーマで書かれている。そのため、内容や主張にはかなりの重複があるが、公文書管理に関する現状と課題が新書一冊にまとめられているのは、ありがたい。

特に、2009年の公文書管理法施行以前から地道な活動を続けてきた国内のさまざまなアーカイブスが紹介されており、「公文書管理の後進国」とされているわが国でも、地方や民間のレベルで、さまざまな草の根の取り組みがなされていたことがわかる。

中でも気になったのは、同じ自治体の先駆的な取り組みである天草市の「天草アーカイブス」と、会社更正法申請の憂き目をみたにもかかわらずしっかり存続された日本航空の「日航アーカイブスセンター」。ちなみに日航アーカイブスセンターは外部非公開とのことだが、博物館として整備した上で外部公開し、入館料を稼ぐという手はないのだろうか。航空ファンの多さを考え、鉄道博物館の成功を思えば、けっこう可能性はあると思うのだが。

まあそれはともかく、そもそも公文書をきちんと管理する意義というのは、いったいどこにあるのだろうか。この点については、国の進むべき方向を判断するための「知的資源」として公文書を捉えるべきであるという著者の指摘が胸に刺さった。それは言い換えれば「情報」のあり方の問題である。公文書とはすなわち情報であり、情報とはすなわち知の「力」の根源であるからだ。

にもかかわらず、わが国が公文書管理法を施行したのは2009年のこと。しかもその対象からは立法や司法、そして政府機関でも「官邸」は対象外であるという。公文書管理の実をつめていくのは、まさにこれからなのだ。そういえば、原子力災害対策本部などの議事録が作成されていなかったという報道があったが、これなど公文書管理の思想からいえば「論外」というしかない。

公文書管理とは、意志決定や実行のプロセスを記録に残し、その判断を未来に委ねる行為でもある。それを記録せず、保管しないことは、その機会を一方的に奪うという点で、未来に対する背信行為であろう。法制度は整備されたが、公文書管理のマインドがこの国に根付くには、まだまだ時間がかかるのかもしれない。

日本の公文書─開かれたアーカイブズが社会システムを支える