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自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【1279・1280冊目】『百年文庫17 異』『百年文庫18 森』

(017)異 (百年文庫)

(017)異 (百年文庫)

(018)森 (百年文庫)

(018)森 (百年文庫)

「異」は乱歩、『悪魔の辞典』のビアス、そして怪奇小説の元祖ポーという強烈な3人。というか、このシリーズをここまで読んできて、3篇ぜんぶ既読だったのはコレが初めて。

江戸川乱歩「人でなしの恋」
結婚した相手は絶世の美男。だが夫は、なぜか夜な夜な、こっそりと土蔵に足を運び……。すさまじい結末も含め、乱歩らしさ全開の一作。乱歩にしてはお話に無理がなく、クレイジーだがエレガントにまとまっている。

アンブローズ・ビアス「人間と蛇」
ベッドの下に潜む蛇と目を合わせてしまった学者ブレイトンは、光る二つの目に射竦められて、しだいに心理的に追い詰められていく。ビアスらしいオチは、一度読んだら忘れられない。

エドガー・アラン・ポー「ウィリアム・ウィルスン」
同姓同名、瓜二つの男に出会う恐怖を巧みに描くポーの名人芸。ドッペルゲンガーものの元祖である。ちなみに翻訳は江戸川乱歩。元祖アラン・ポーと乱歩の「競演」も見ものである。

さて、「森」はそのタイトルとはややウラハラな、心の輝きの刹那を切り取った三編。どれも「逸品」の名にふさわしいが、特にモンゴメリーの作品には感動した。

○L・M・モンゴメリー「ロイド老嬢」
赤毛のアン』のモンゴメリーなんて、と思っていたが、読んでびっくりの感動作。プライドと自意識のカタマリのようなロイド老嬢が、一人の若い女性への献身を通して心を開く。自分を後回しにし、他人を自分に優先することで、はじめて自分を変えることができるのだ。

ジョルジュ・サンド「花のささやき」
これはなんとも美しい一篇。花がささやき、風が語り、妖精が笑う。しかしそれを聴き取れるのは、ちいさな乙女の純真な心だけ。自然のみずみずしさが鮮やかに伝わり、感性を洗われる。

○ラビントラナート・タゴール「カブリワラ」
5歳の娘とカブールの果物売りの心の交流を描く。階級社会インドでは相当のインパクトがあったと思われるが、それを知らなくても、やさしく包まれるような短篇だ。それにしても、「森」はどこに出てきたんだろう?

新編 悪魔の辞典 (岩波文庫) 赤毛のアン (講談社文庫―完訳クラシック赤毛のアン 1)