自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【1178冊目】土岐寛・平石正美・外山公美・石見豊『現代行政のニュートレンド』

現代行政のニュートレンド

現代行政のニュートレンド

以前、この読書ノートで『現代行政のフロンティア』という本を取り上げたが、本書はどうやらその改訂版のようなものらしい。ということは、本書の大部分は二度目の読書となるはずなのだが、まあなんとキレイに前回の内容を忘れていたことか。読んだ覚えのある箇所にひとつもぶつからなかったのは、われながら呆れるばかり。読んだ端から内容を忘れていくのはいつものことだが、いくらなんでもこりゃヒドい。

そんな自虐感とともに読み終えた一冊だったが、次にまた本書の新しいバージョンが出たとしても、また「新鮮な」気持ちで読めるような気がしてしまった。というのも、言い訳をするわけじゃないが、いかにも行政学のテキスト然とした構成で、よく言えばオーソドックス、悪くいえば無個性。何度会っても名前を覚えてもらえない営業マンみたいだ。

とはいえ、行政学の基本的な知識を整理するには、本書は(相変わらず)よくできている。欧米の歴史的経緯を踏まえた行政理論も分かりやすいし、ガバナンス論や行政組織内のダイナミズムも、理論と現状がよくかみ合った解説になっている。自民党政権時代に書かれた「フロンティア」の内容に、民主党政権以後の変化が追加されているのは、「付け足し」感があからさまに分かってしまうのがちょっと気になるが、現状理解には十分だ。

考えてみれば、確かに「フロンティア」を読んだという記憶そのものはいささかあやしいが、本書に書かれていた内容は、覚えているとまではいかなくとも、どこかで学び、知っていることが大半であった。読書体験自体は濾過されたが、必要な部分だけはしっかりと網目にひっかかっているような感じというか。そして、テキストというもの、本来はそれがベストの形なのかもしれない。

無個性だのなんだのと書いたが、その内容がそれなりに自分の中に残っていた以上(覚えているというところまでいかなかったのは、私自身の怠慢のいたすところ)、やはりこの本は、教科書としてよくできているというべきなのだろう。

現代行政のフロンティア