自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【1169冊目】土橋正『仕事にすぐ効く魔法の文房具』

仕事にすぐ効く 魔法の文房具

仕事にすぐ効く 魔法の文房具

「魔法の」とはずいぶん大きく出たタイトルだが、内容はむしろ大変オーソドックスな「スグレモノ文具」の紹介だ。むしろ個人的には「仕事ですぐ効く」のほうが殺し文句だった。

なぜなら、良い文具を使うことは、良い仕事をすることに直結するからだ。ツールの良し悪しが決定的に重要なのは、デジタルもアナログも同じ。むしろ、スペックが一目で読みとれないアナログのツールこそ、本書の著者のような「目利き」の力を借りつつ、しっかりと選択しなければならない。公務員だからといって、官給品ばかり使っていればよいというものではない。自戒を込めて言うのだが、むしろこういうツールにこそ、どんどん自腹を切って投資していくべきなのだ。

本書の目次は「鉛筆」からはじまる。そして、そこで紹介されている数々の鉛筆の、なんと魅力的で、使い勝手が良さそうなことか。気分は「エンピツにケシゴム」だった小学生の頃に一気に逆戻り。ノスタルジーのなかに鉛筆のダイナミズムとその魅力を思いだしてしまった。でも、鉛筆って、他のものには代えがたい良さがある。それを思い出させてくれた本書に感謝しつつ、いつのまにかシャープペンシル一本やりになってしまっていた自分を、ちょっと反省。

他にもペン類からノート、付箋、手帳など、身近で良く知っているつもりのツールがもっている多彩で魅力的な世界が、本書では次から次に展開される。中でも読んでいて「あっ」と思ったのは、著者が考案したという「時計式ToDo管理メモ」(p.149)。これは大判のポストイットなのだが、そこに午前と午後の時計の盤面が書かれているのだ。そして、使う人はそこに円グラフのように時間を区切って、その日やるべき仕事や予定を書き込んでいく。つまり、ふつうはリスト形式になることの多いToDoリストを、時間と共に管理するというものなのだ。

コロンブスの卵というコトワザは、まさにこのアイディアのためにあるようなものではなかろうか。なにしろ、書きだしていくだけでは延々と長くなる(そして、結局はこなしきれない)ToDoリストを、所要時間を予想してこの「時計の文字盤」に落とし込むことで、一日の作業量の限界が見え、リストの優先順位をそれに沿って絞り込むことができるのだ。しかも「今なにをすればよいか」が一目瞭然なので、他の仕事に目移りすることなく目の前の仕事に集中できる。さらにポストイットでできているので、PCの画面でも卓上カレンダー上でも、あるいは出先にまで持っていくことができるのだ。終わった仕事はマーカーで消し込んでいく(そのためのマーカーも紹介されている)ことで、達成感を味わうこともできる。こちらからダウンロードもできるので、ぜひぜひ。

ということで、本書は単なる文房具カタログではなく、文房具を通した業務改善アイディアの宝庫にもなっている。ツールとノウハウが表裏一体になっているのだ。それはまた、デジタル環境にどっぷり浸かったわれわれの仕事のやり方に対する、「それでいいの?」という問いかけでもある。著者は、パソコンを使った仕事は「作業」であると断言する。クリエイティビティ(あまり好きな言葉ではないが)を求める時には、むしろパソコンを切って、紙とペン(あるいは鉛筆)を手にするべきなのだ、と。確かに、パソコンに向かっていると、発想が痩せる。アナログに戻ることで、切り開かれる何かがある。そこを超えるためのヒントが、本書には文字通りぎっしりと詰まっているのである。