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自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【1155冊目】『百年文庫3 畳』

せつなさ・いとおしさ・なつかしさ

(003)畳 (百年文庫)

(003)畳 (百年文庫)

「畳」とはまた不思議なタイトルだが、読んでみて納得。コンパクトで、ちょっとウェットで、ちょっとノスタルジックな「和」テイスト。確かにこれは「畳」の味わいだ。では、収録されている3篇について、また簡単に感想をメモしておこう。

林芙美子「馬乃文章」
主人公の「僕」はもの書きだ。妻と娘はなぜか馬肉が好きで、「馬食べまちょ、お家へ帰って馬ぐちぐち煮まちょ」なんていう。しかし「僕」は、せっかく稼いだお金で馬肉を買って帰るどころか、みんな飲んでしまう。貧乏文士とその家族の貧乏生活の中に「馬」が出てくるのが妙に印象に残った。

獅子文六「ある結婚式」
アイサツが嫌で結婚の媒酌人なんかやりたくないという「私」が、ひょんなことから先輩の息子の結婚式の仕切りを任されてしまう。今で言う人前式のようなやり方も、当時は新鮮だったのだろうか。型らしい型がないなかで、やっぱり妙なセリフ回しをしてしまうのが、おかしい。ユーモラスでほんわかした一篇。小津の映画を思い出す。

山川方夫「軍国歌謡集」
「私」は、変わり者の友人「大チャン」のところに居候している。その部屋の前を、毎晩、軍歌を歌いながら通る女性がいるのだが・・・・・・。その女性を、顔もみないうちから恋い焦がれる「大チャン」と、女性にばったり出会ってしまう「私」。ちょっとしたボタンの掛け違いと、かすかな意地悪の気持ち。読んだ後にちょっぴり舌の上に残る、奇妙なほろ苦さ。会話のトーンに、昭和を感じる。