自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【1154冊目】曽和俊文・山田洋・亘理格『現代行政法入門』

現代行政法入門 第2版

現代行政法入門 第2版

行政法のテキストは、定期的に読むようにしている。もっとも、最近はだいぶサボっていた。

以前は同じ教科書の反復読みだったが、この「読書ノート」を始めてから、とっかえひっかえ型になった。いや、もちろん、ちゃんと勉強するのなら、同じ教科書を何度も読み込んだほうが良いのは承知している。手を広げるな、というのは、法律に限らず勉強というものの鉄則だ。

しかし、いろいろ手を広げることで、かえって見えてくるものもあるように思う。大事なことはどんな教科書にも書いてあるし、項目立ての共通性などから感じることも多い。それと、特に法律の分野では、判例がきちんとフォローされている最新の教科書を使うか、別の資料でカバーすることが絶対必要だ。同じ教科書を反復する場合も、新しい版を必ずチェックしたり、最新の判例集などをあわせ読みする必要がある。

そういう意味で、本書は今読むテキストとしてはとても良かった(今後もマメに改訂していってほしい)。判例が比較的新しいものまできちんと載っているし、解説もたいへん丁寧で行き届いている。ちょっとおもしろいのは、テーマごとに関連判例の一覧が表になって掲載されているところ。例えば210頁には、「行政処分性に関するこれまでの主要な判決例」というリストがあって、テーマごとに計27件の判例・裁判例とその結果(処分性を肯定したかどうか)が載っているのだ。

説明は良くも悪くもオーソドックスだが、伝統的な説明をそのまま踏襲するのではなく、法改正や判例の動向、学説の最新の考え方などをバランスよく取り入れた「生きた説明」になっているのがうれしい。また、「コラム」「発展問題」「ケースの中で」など、本文と別枠での解説が多く、基本と発展のメリハリがよく効いている。全般的に、コンパクトな分量の割に、丁寧で充実した内容であるという印象を受けた。

それにしても、新司法試験に行政法が取り入れられたことの影響は大きい。本屋に行っても、行政法の棚揃えは旧司法試験時代と段違いの充実ぶりだ。昨今の司法制度改革にはどうかと思う点も多いが、こういう余録があるとなると、あまり文句ばかり言ってちゃバチがあたりますなあ。