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自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【1142冊目】小畑精武『公契約条例入門』

公契約条例入門―地域が幸せになる“新しい公共”ルール

公契約条例入門―地域が幸せになる“新しい公共”ルール

いま「こうけいやく」と入れて変換キーを押したら「光景約」と出てきた。……かようにこの言葉は日本語として定着しているとは言いがたい。

工事や物品購入などで自治体が結ぶ契約について、地方自治法一般競争入札を原則としている(第234条第1項、第2項)。しかしそれが容易に「安かろう悪かろう」のダンピングに結びつきやすいことから、最低制限価格制度や総合評価方式などの補完措置がとられてきたのはご存じのとおり。

しかし、価格中心の契約制度にはもうひとつの「副作用」がある。それが、雇用されている職員の賃金切り下げである。地方自治体の契約制度では、地域の企業が受注の中心となる。そこで契約金額の低さが人件費で調整されるということは、めぐりめぐって、その地域の被用者賃金が下がるという結果を招くことになりかねない。本書で取り上げられている「公契約条例」は、自治体が行う契約行為を自治体側から縛ることで、こうした「ダンピング→契約価格の下落→人件費の縮減→被用者の低賃金化」に歯止めをかける制度であるといえる。

こうした動きはすでに一部の自治体で見られる。本書でくわしく紹介されている千葉県野田市などでは、公契約条例という名称を採用するかどうかはともかくとして、公共サービスにかかる契約内容を制御するための仕組みがつくられつつあるらしい。その後押しをすることになったのが、2年前に成立した「公共サービス基本法」だ。恥ずかしながらこの法律のことはあまりよく知らなかったのだが、この法律の第11条には、こう書かれているのである。

「国及び地方公共団体は、安全かつ良質な公共サービスが適正かつ確実に実施されるようにするため、公共サービスの実施に従事する者の適正な労働条件の確保その他の労働環境の整備に関し必要な施策を講ずるよう努めるものとする。」

これもいろんな解釈がありうるだろうが、ストレートに読む限りでは、これも本書に指摘されていることだが、この条文によって「労働条件の整備は国の責務」だとか「契約自由の原則」といった議会答弁(言い訳)は、事実上封殺されたといってよい。この手の条例は、今までほとんどの場合、いわゆる共産系・社民系の会派が提案し、否決されるというパターンが多かったように思うが、野田市では、自民・公明も含め全会派の賛成で公契約条例が可決されている。ゆっくりではあるが、時代は確かに変わっているのかもしれない。まだまだこうした条例を作っている自治体は多くはないが、このご時世、野田市がいつまでもレアケースだと思っていてはいけないのだろう。