自治体職員の読書ノート

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【1135冊目】大沢在昌『絆回廊 新宿鮫X』

絆回廊 新宿鮫?

絆回廊 新宿鮫?

5年ぶりという「新宿鮫」復活。いつのまにやら、なんともう10作目なんですねえ。

最初に読んだのはもう10年以上前。公務員試験の一次が終わった頃に1作目を読んでハマり、2作目の「毒猿」が強烈に面白く、3作目から5作目くらいまでは一気に読んだ。覚えているのは、役所の面接試験の日、早く着きすぎたので近くの喫茶店で「毒猿」を読んでたらやめられなくなり、危うく遅刻しそうになったこと……って、面接対策でもしろよ、自分。

その後、「無間人形」「炎蛹」あたりまでは読んだのだが、6作目の「氷舞」あたりになると読んだかどうか記憶があやしく、7作目からは間違いなく読んでいない。なぜそのあたりで「鮫」から遠ざかったのかよく覚えていないんだが、多分その頃は、小説のみならず、なんとなく読書そのものから遠ざかっていたような記憶が。だから実は私の読書ライフには、まるまる3〜4年ほどのブランクがあって、その間に出た新人作家やベストセラーは、今でもすっぽり抜けている。

まあそれはともかく、こういうシリーズのいいところは、どんなに久しぶりでも一瞬でその小説世界に「戻れる」というところだ。鮫島、晶、桃井、藪(今回はあまり出番がなくて残念)などの顔ぶれの登場で、たちまち大沢ワールドに引きこまれる。懐かしい。

ハードボイルド。鮫島のみならず、本書に出てくる連中はみんなハードボイルドだ。組織に属していたり、いろんな事情を抱えていたりするが、その中で誰もがおのれの生きざまに殉じ、おのれの美学に殉じている。それが的外れなものであったり、いささか身勝手な場合もあるが、それでもあえてそれを承知で、自分の人生を自分で引き受けることを知っている。そこがたまらなくカッコいい。

筋書きはあえて書かない。それほど複雑ではないし、筋を追う楽しみもあるからだ。ひとつだけ、読んでいて衝撃を受けたのが、ある人物の死。実は鮫島よりこの人物のほうが私はファンだったので(だいたい主人公より脇役のファンになることが多いので……)、この死はショックだった。もっとも、この著者は以前、シリーズものと言いつつその主人公を死なせたこともあったというから、この程度は予測してかからんといかんのだろう。う〜ん、でもやっぱり、ショック。小説の登場人物が死んだショックから立ち直れないなんて、久しぶりだ。

ちなみに本書、元になっているのはなんと「ほぼ日刊イトイ新聞」でのネット連載。つまり元々、パソコンとネット環境さえあれば無料で読めたものなのだ。それが書籍として刊行され、ベストセラーになる。この意味を、はたしてどう考えたらよいのだろうか? というか、出版界に身を置いて出版不況を嘆いている人たちの中で、この意味をマジメに考えている人はどれくらいいるのだろうか……。疑問。

新宿鮫 (光文社文庫) 毒猿―新宿鮫〈2〉 (光文社文庫) 屍蘭―新宿鮫〈3〉 (光文社文庫) 無間人形―新宿鮫〈4〉 (光文社文庫) 炎蛹―新宿鮫〈5〉 (光文社文庫)