自治体職員の読書ノート

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【1131冊目】たかのてるこ『ガンジス河でバタフライ』

ガンジス河でバタフライ (幻冬舎文庫)

ガンジス河でバタフライ (幻冬舎文庫)

小心者で、英語もほとんど話せず、その上方向オンチ。そんな著者が突然の決意で旅に出たのは、20歳の大学生のときだった……。

本書は著者の「最初の旅」である香港・シンガポール・マレーシアと、その次に行ったインドのことを書いた一冊。この人の本は初めて読んだが、すごく面白い。そして、とっても気持ち良い。

旅先での失敗とか不安、驚きが、すごくストレートに表現されている。そして、その中でのかなり無理やりな英語とボディランゲージでのコミュニケーションが、意外に通じていくのがすごい。確かに、海外に行くと「キレイな英語を話そう」なんて夢のまた夢、とにかくあらゆる手段を使って相手に「伝える」ことに必死になるのだが、その現地でのムリヤリぶりをここまで正直に書くか! という感じ(「グッド」という単語ひとつだけで料理の味について「会話」しているシーンなんて、お腹を抱えて笑ってしまった)。そのドタバタぶりがかえって楽しそうで、なんだかこちらまで旅に出たくなる。そして、笑っているうちに、旅に出ることへの不安とか抵抗とかがスーッと消えていく。

そして、本書が気持ち良いのは、現地の人を茶化したり面白い光景を笑ったりはしているものの、それを上から目線で非難したり、ひるがえって日本のことを安易に否定したりしていないところだ。旅日記や旅エッセイの中には、どうもその手のモノが多くて(特に「日本否定型」が多いかな)読んでいて疲れるのだが、この本にはそういうところがほとんどない。

もちろんどこかに「比較の目線」を持っているのかもしれないが、それがうまくカバーされている。だから、読むほうはヘンに日本との違いを意識することなく、現地の人々とか雰囲気にどっぷり浸かることができる。その「どっぷり」感が著者の旅とシンクロしているようで、とっても気持ち良いのだ。

なお、冒頭にも書いたとおり、本書には「アジア編」(香港・シンガポール・マレーシア)と「インド編」が収められているのだが、個人的にはインド編に強烈なインパクトがあった。行った当日が祭りで体中に得体のしれない染料をぶっかけられたり、道路渋滞でなんと15時間も待たされたり、タイトルどおりガンジス河でバタフライをやって流れてくる死体をぶったたいたりと、まあ体験することも強烈なのだが、その向こうに広がるインドの広大さ、スケールのデカさが半端じゃない。特に、有名なバラナシの「行ったらそこに住みつきたくなる」なんでも呑み込んでしまうような悠久の時間の流れは魅惑的。藤原新也の写真を思い出した。

それにしてもこの著者、とにかくハチャメチャでアクティブでたくましい。しかし、どこかシリアスでナイーブなところももっていて、そのへんのギャップが面白い。この人、ほかにもどうやらモロッコで断食したり、サハラ砂漠で貞操の危機に会ったり、ダライ・ラマに会ったりしているらしい。う〜ん、気になる。読んでみたい。

印度放浪 (朝日文庫) モロッコで断食(ラマダーン) (幻冬舎文庫) サハラ砂漠の王子さま (幻冬舎文庫) ダライ・ラマに恋して (幻冬舎文庫)