自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【1119冊目】デイル・ドーテン『決定版 仕事は楽しいかね?』

決定版 仕事は楽しいかね? ?会社の宝になる方法

決定版 仕事は楽しいかね? ?会社の宝になる方法

最初に白状すると、本書は『仕事は楽しいかね?』シリーズの3作目なんだが、読み終わるまで全然シリーズものだと気付かなかった。

いや、ちょっとおかしいな、とは思ったのだ。もともと本書を読もうと思ったのは、丸善で平積みになっているのを見かけてパラパラと立ち読みして「面白そうだな」と感じたのがきっかけだったんだが、買うほどの本じゃないような気もして(失礼)図書館で予約して借りたのだ。そしたら本屋で見た表紙は黒っぽいのに、こっちは青っぽい。よく見るとタイトルに「決定版」という余計な(?)一言がついているじゃありませんか。おやおや。

いや、悪いのは予約するとき見落としたワタシである。でも、シリーズものの1作目が『仕事は楽しいかね?』で、2作目が『仕事は楽しいかね? 2』だったら、3作目は『仕事は楽しいかね? 3』なんじゃないの〜? 『決定版 仕事は楽しいかね?』というタイトルは確かに目に入ったんだが、その時はすっかり、1作目をバージョンアップして完成度を高めたのが決定版だと思い込んでたのだ。道理で、本屋でパラパラやった時の印象とはだいぶ違ったワケだ。

ということで、しょっぱなからつまづいた本書だが、内容は(読み終わるまで3作目だと気付かなかったくらい)独立したモノになっているので、前作を読んでなくても全然心配ない。

ちなみに中身については、原題の「Better than Perfect」のほうが、ピンポイントで本書の核心を突いている。「完璧よりもっと良く」というと、なんだか矛盾しているようだが、本書によると、実は「完璧」という状態自体がひとつの落とし穴なのだ。なぜなら、ある状態が「完璧」だと思い込んだら、もうそこから先の進歩はないからだ。むしろその時点で思考は硬直し、ドグマ化し、動かなくなる。それは組織や仕事にとって、実はとてもよくない状態だ。

本書でいろいろ語りかけられている「方法」は、むしろ事態を徹底して動かしていくことにつながっている。「もっと良くできないかなあ」という問いかけ、周囲を信じることで周囲の力を引き出すこと、「愛すべき非常識人」になること。それによってもたらされる活力、活性化、フレキシビリティが、「完璧」という固定観念を超えるカギとなる。それは会社だけでなく、役所の仕事にもいえることだ。むしろいろいろな縛りで硬直化しやすい役所ほど、本書のような考え方は必要になってくる。

ということで、本書は「会社」を超えた応用範囲の広さをもっている。地域活動、家庭、趣味、いろんなところでこの「完璧の罠」は網を張っているからだ。その指摘にはそれなりに納得。ただ、文章が読みやすいのはいいのだが、読みやすすぎて歯ごたえなさすぎ。なんだか流動食を飲まされているみたいだ。たまにはいいけど、しょっちゅうこの手の本ばかり読んでると、そのうち咀嚼力がなくなりそうな気がする。

仕事は楽しいかね?仕事は楽しいかね? 2