自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【1110・1111冊目】『自治体法務検定公式テキスト 政策法務編・基本法務編』

自治体法務検定公式テキスト(自治検) 基本法務編〈平成23年度検定対応〉 (自治体法務の基礎知識が身につく!)

自治体法務検定公式テキスト(自治検) 基本法務編〈平成23年度検定対応〉 (自治体法務の基礎知識が身につく!)

7月10日の試験を受けるつもりで買ったのだが、残念ながら所用で受けられなくなってしまった。

受けられないのだから読まなくてもよさそうなものだが、ちらちら見ていたら思いのほか内容がよくできていたので、結局3か月くらいかけて、マーキングしながらほとんど読み切ってしまった。ボリュームはけっこうあるが、それでもこの2冊で自治体法務に必要な知識がほぼコンプリートされているのだから、それを思えば安い買い物だ。

政策法務のほうは『政策法務事典』や、最近出た『自治体政策法務』のような、網羅性が高く充実した本があるので、何が何でも本書をお薦めすることにはならないが、実は基本法務のほうが実務的には貴重。なにしろ、憲法行政法地方自治法民法、刑法のポイントをここまで網羅し、しかも自治体職員向けにまとめられたテキストは、現時点で多分これ一冊だけなのだ(行政書士やビジネス実務法務のテキストなどもあるにはあるが、それだとちょっと実用性という点では物足りない)。しかもとおりいっぺんの解説ではなく、自治体の現場に引き寄せて懇切丁寧な説明がなされているのだから、まったくもって言うことはない。

法律の勉強についてはエラそうなことを言える立場ではないのだが、「いろいろ読むより一冊のテキストを繰り返し読む」ことの重要性は、いろんなところで言われている。その点、この「読書ノート」のようなあっちふらふら、こっちふらふらの読み方は全然いかんのであるが、それはまあともかくとして、特に個別法の分野において、各法律を横断的にカバーした「これ一冊」のテキストは、本書が出るまではなかなか見当たらなかった。

特にありがたいのは民法や刑法で、まともに勉強したら民法なんぞはそれだけで分厚い基本書が三冊とか四冊とかになってしまうところを、これだけコンパクトに、しかもけっこう過不足なくまとめていただいたことに対しては、自治体職員一同、深く感謝しなければならないだろう。

さて、今回が2回目(基本法務は1回目)となる自治体法務検定については、最初に書いたとおり受検をパスしてしまったので中身については何も言えないのだが、この検定制度が設けられたこと自体がきわめて画期的だということだけは、声を大にして言いたい。それは、単に法律の勉強のための試験ができたというだけではなく、分権時代の自治体職員のマインドを方向づけ、その素養を試す制度ができたという点で画期的なのだ。

それが「法務」において作られたのはなかなかイミシンなものがあるのだが、そのうち財務や議会などでも同じようなものができてくるのではないかとひそかに期待している。最終的には「自治体職員検定」のようなカタチでまとまってくると面白い。もちろんその際は「自治体議員検定」もペアになって登場すべきでありましょう。そんなことを言っているヒマがあったらお前も受けろ、と言われそうだが、ま、また来年ということで……。受検されるみなさん、がんばってくださいませ〜。

政策法務事典自治体政策法務 -- 地域特性に適合した法環境の創造