自治体職員の読書ノート

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【1077冊目】田村俊作・小川俊彦編『公共図書館の論点整理』

公共図書館の論点整理 (図書館の現場 7) (図書館の現場 7)

公共図書館の論点整理 (図書館の現場 7) (図書館の現場 7)

図書館は、二重の意味で気になる存在だ。

まず第一に、本好きとして図書館には足を向けては寝られない(向けてるけど)。読む本の8割以上は、たぶん図書館で借りた本。借りて読んだものの気に入って購入したケースも少なくない。最終的には身銭を切って買うとしても、そのための「踏み台」として図書館は欠かせない。

そしてまた、自治体職員にとって、図書館は数ある「職場」のひとつであって、「いつかそこで働くかもしれない場所」である(異動希望は毎年出してるんだが、なかなか行かせてもらえまへん)。最近は特にカウンター業務が民間委託になり、余計に「狭き門」になってしまった。

まあそれはともかく、私にとって図書館は、カウンターのこっち側と向こう側、両方が気になる場所である。本書はどちらかというと、運営サイドの視点で書かれた本。私にとっては「まだ見ぬあこがれの地」の内部事情を記した一冊であるわけだが、たぶん一般の図書館ユーザーにとっても、こうした視点で図書館を見ることは、なかなか楽しいことではないかと思う。

本書は、図書館にまつわる論点を7つ取り上げ、その議論の経過をたどり、整理を試みたもの。まずは列挙してみよう。次の7つである。

1 「無料貸本屋」論(ベストセラー本の大量購入等)
2 ビジネス支援サービス
3 図書館サービスへの課金
4 司書職制度の限界
5 公共図書館の委託
6 開架資料の紛失とBDS(Book Detection System)
7 自動貸出機論争

個々の議論の中身も、なかなか面白い。図書館サービスへの課金など、タブー視されてしまってはいるが、マジメに考えていくとなかなか面白いテーマではないかと思う。閲覧や貸出しは無料のままとしても、本書に書かれているとおり、例えばインターネットの利用などは料金を徴収してもよいような気がする。図書の延滞も、延滞料を徴収するくらいでよいのではないだろうか。

あと、開架資料の紛失(とは言っているが、実は盗難)に対する図書館側の姿勢の甘さはちょっと気になった。無断持ち出しの探知システムであるBDSの導入に対しても「利用者を信頼しないのは問題だ」とか、ひどいものになると「結果として図書が読まれているということだから問題ない」というような反対意見があるというから驚いた(もっとも、今は導入の可否より、盗難が発覚した場合の対応に論点が移っているというが)。図書が税金で購入されていることの意味を、こういう人たちはどう考えているのだろうか。

それと、全体に共通して2点、思ったことがある。ひとつは、そもそも図書館というものが「何のために」「誰のために」あるのかという、いわば図書館の「ミッション」が、あまり共通認識として明確になっていないのではないか、ということだ。

もちろん図書館法では、第1条に「国民の教育と文化の発展に寄与すること」が目的だと書いてあるし、第3条では「図書館は、図書館奉仕のため、土地の事情及び一般公衆の希望に沿い、更に学校教育を援助し、及び家庭教育の向上に資することとなるように留意」しなければならないとある。しかし、これではいくらなんでも抽象的すぎるし、なぜ図書館でなければならないのか、という答えにはなっていないように思われる。

共通認識としてのミッション性があいまいな分、論者それぞれの理想や理念が図書館論争にはいとも簡単に入り込む。何のための図書館か、という前提がずれているから、議論がかみあわない。そういうもどかしさを、本書の中でも私はたくさん感じた。本書は基本的に議論の整理に徹しているだけに、そういうところが見えやすいのかもしれない。

もう1点の「気になったこと」は、利用者側の要望(図書館法第3条にいう「一般公衆の希望」)が、それぞれの論争の中においてあまり考慮されていないのではないか、という点だ。教育施設という位置づけだからなのかもしれないが、どうも利用者は「教えられる」「指導される」対象としか思われておらず、利用者のニーズを運営に反映させるという姿勢が「図書館業界」全般に乏しいのでは……と言ったら、言いすぎだろうか。かつて松下圭一氏は、こうした「オカミが住民を導き、教える」という姿勢を厳しく批判し、そうした「行政が市民を教育する」時代は終わったと告げた。同じことは、図書館にも言えるのではないだろうか。

う〜ん、短くまとめようと思っていたんだが、やっぱり図書館ネタになると長くなる。しかし、やっぱりこのテーマは私にとっては面白い。今度は図書館のヒストリーを探り、そこから図書館の本質のようなものを掴みだしてみたい。

社会教育の終焉 図書館史