自治体職員の読書ノート

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【1074冊目】目黒考二『だからどうしたというわけではないが。』

だからどうしたというわけではないが。

だからどうしたというわけではないが。

いろんなテーマごとに、「あの本からこの本へ」本のリレーを試みたエッセイ、とのこと。昔の映画、少年野球、犬、図書館など、それぞれのテーマにまつわる本が五月雨式に紹介される。

書評というより、本のソムリエ、とでもいうべき一冊だ。「この料理に合うワインなら、これとこれがオススメでございます……」なんて、ね。元々は「Web本の雑誌」に連載されていたらしいが、12回で終わってしまったのが惜しまれる。

まあとにかく驚かされる。テーマに即した本をよくこれだけ列挙できるものだ。まさしく古今東西、それも有名無名とりまぜつつ、そのテーマの「ツボ」になる本を見事に並べてみせる。しかもその紹介文がうまいのだ。ついつい読みたくなる。ひとつひとつの紹介が長いので引用は控えるが、こういう本を読むと読みたい本が増えて困る。

冷静で客観的な書評、というのではない。むしろ主観たっぷり、思い入れたっぷりなのだが、そこが読んでいて心地よい。なんだか居酒屋で読書家の友人や先輩に「この本良いよ〜。読みなよ〜」と言葉巧みに薦められているような感じなのだ。しかも評価は的確、引用はピンポイント。何より、圧倒的な読書量の裏打ちが感じられるだけに、そのセレクションが信頼できる。

ちなみに一番印象的だったのは、実はほとんど本が紹介されていない第9章「実話雑誌の青春」。これは著者自身の、実話雑誌の編集に携わった若き日々を綴った1章なのだ。誰もが通る若き日々特有の、楽しさ、ほろ苦さ、せつなさが印象的で、こういうのっていいなあ、と素直に思える。そして、この実話雑誌を作っていた会社がすごいのだ。椎名誠氏の『本の雑誌血風録』にも書かれていたが、本書によるとこんなところだったとか。

「朝10時の出社時間にとにかく誰も来ないのである。(略)昼近くになってようやく現れると、すぐに近くの喫茶店にでかけていく。(略)その奥のほうで1〜2時間、コーヒーを飲みながら、それぞれの編集部の面々がたむろするのだ。で、会社に戻ると、今度は昼飯を食べに行く。食後はまたコーヒーだ。ようやく社に戻るともう午後4時すぎ。すると今度は雀荘に急ぐのだから、いったい何をしに会社に行っているのやらわからない」

いいなあ、こういう会社。今もこういう会社って、あるんだろうか。あったらぜひ転職したいので、教えてください。