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自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【1072冊目】町田康『告白』

笑い・遊び・ゆるさ

告白 (中公文庫)

告白 (中公文庫)

こら、おもろいで。正味、大傑作、ちゅうやつですがな。まずこの、主役の熊太郎の思考だだもれの文体がたまらんのんね。まあこの熊太郎、面倒やから熊、ちゅうて呼び捨てにしたるけんどな、この熊がなんちゅうかなあ、頭ん中にぐるぐる言葉まわっとってな、それがこう、すうっと、素直に口に出てきいひんねんな。ほんでな、自分でもそれをわかっとって、わかっとんねんから余分に頭ん中は妄想バクハツ、傍目にゃあ目え白黒させて「蛇がにゅうめん呑んだ」やら「雀が天麩羅食べてんの」みたいなことちゅてまあ、村の娘ごやらにゃ白い目で見られるわけやないか。男どもも熊のこと馬鹿にしてん、なぜいうたら、ほかの男どもが朝から畑で働いちゅうに、熊ときたらなぜか、いっぱしの侠客気取りやねん。年老いた親にぶったかって、昼日中から酒飲み呆けとる。ほんで博打ばっかりやっとんねんが、その博打がまたからっきしの弱さや。あかんではないか。
そんな熊はまあ、いうたら完全な社会不適格者やんか。村のごくつぶしやんか。ほんで熊自身ちゅうたら、頭ん中思考ぐるぐる、妄想ぐるぐるで、完全に煮詰まりきっとるわけや。町田康の小説ちゅうたら、思考暴走煮汁沸騰的な男はよう出てくるんやねんけど、たいていはそれが煮詰まり切って、ワケのわからんことやらかして終わるわけや。まあそこまでで、ページ数で言うたら100頁かそこら、ちゅうわけやねん。ところがこの『告白』ちゅうたら、単行本で600頁超えとんねん。文庫本なら800頁超えとんねんで。おい。並みの煮詰まり方やあれへんわけや。さんざっぱら痛めつけられ、コケにされ、それがまた脳内で何倍にも膨れ上がってぐるぐるぐるぐる回ってんねんで。それがどないなるか、こら、血も凍る、ちゅうやつやねんで。ほいでな、最後の最後に、この『告白』ちゅうタイトルの意味が分かるわけやんか。こら、感涙もんやで。まあ、だまされたと思って読まんかい。正味、損するで、人生。

<以下は引用>
 お外題は「河内十人斬り」別名「水分騒動」。
 明治二十六年に城戸熊太郎、谷弥五郎の二人が恋の恨み、金の恨みを晴らさんがために十人斬った挙げ句、金剛山に立て籠って自決したという事件を、当時の富田林警察署長お抱えの、音頭好きの人力車夫、岩井梅吉が演じ大評判となって、いまなお演じられる河内音頭のスタンダード・ナンバーである。
 音頭取りがひときわ力をこめて台詞を詠んだ。
 「斬り刻んでも飽きたらんちゅうのんはおまえのこっちゃ。こなしてくれるわ、エイッ」