自治体職員の読書ノート

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【1067冊目】日経グローカル編『地方議会改革の実像』

地方議会改革の実像―あなたのまちをランキング

地方議会改革の実像―あなたのまちをランキング

議会改革の「いま」を切り取った一冊。本文もなかなか面白いが、なんといっても本書のメインコンテンツは、巻末に一挙掲載された都道府県・政令市・市区の「議会改革度ランキング」だろう。なんとこれ、議会基本条例の制定、委員会や全員協議会などの公開、議員個人の議決に対する賛否状況などの指標を設け、それに沿ってすべての自治体に点数をつけ、都道府県・政令市・市区をそれぞれランキング化しているのだ。市区など、改革度の「偏差値」までついているという徹底ぶり。「わが県」「わが市」のランキングを覗いてみるだけでも面白いだろう。

もちろんこういう調査、指標が適切かどうか、点数の配分は妥当かなど、文句をつけようと思えばいくらでもつけられる。だがそういうあら捜しをする前に(特にランクの低かった自治体の議員さんが)考えてみるべきなのは、なぜこういう「ランキング」が必要だったか、ということだ。思うのだが、そもそもこの調査の背景にあったのは、分権改革後も遅々として進まない議会改革への苛立ちだったのではなかろうか。

その点、行政側も決して十分な「改革」が行われているとはいえないかもしれないが、それでも分権改革からの10年、一部の先進自治体に引っ張られるようにして、多くの自治体は、まがりなりにも「それなりの」変化を遂げてきた。

その変化のスピードで、行政部門に比べ、議会はどうしても見劣りすると言わざるをえない。その結果が、本書にも取り上げられている大阪府名古屋市などの、改革派首長と議会の対立であった(阿久根市はちょっと事情が違うように思うので、ここではおいておく)。こうした自治体では、首長が住民に支持されればされるほど、返す刀で議会に非難が向いた。挙句は「議会不要論」まで飛び出す始末。首長自身が煽りたてている面もあるような気もするが、それにしても、そうした非難を受けるだけの理由が、議会の側になかったとはいえないのではないか。

もっとも、議会の事情を斟酌すれば、改革スピードが遅いのは、議会という機関の性質上、しかたない面もあるのかもしれない。行政の場合、先進自治体と呼ばれる自治体の多くは、首長の交代によって改革が一気に進んでいる。しかし、議会は4年に一度の選挙があるとはいえ、なかなかドラスティックには変わらない。改革の「火付け役」が生まれにくい構造が、議会にはあるように思う。その意味で、本書はこのようなランキングをすることで旧態依然の議会のお尻を叩き、目を覚まさせるための「火付け役」を買って出たのかもしれない。

本書によると、改革が進んだ議会はさらに改革が進み、何もしない議会は何もしないままという「二極化」がいま生まれているという。コイズミ・タケナカじゃあるまいし、なんでも「改革」が良いとは思わないが、同じ制度の下にある地方議会の間にこれだけ差がついてしまうと、さすがにちょっとまずいような気がする。いや、一番問題なのは、この状況を「まずい」と思っていない大半の議会の現状であろう。この後ははたして議員一人ひとりが自ら「火付け役」になれるのか、月並みな結論で恐縮だが、問われているのは議員個々の資質と意欲であるように思われる。