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自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【1063冊目】パウロ・コエーリョ『ポルトベーロの魔女』

ポルトベーロの魔女 (角川文庫)

ポルトベーロの魔女 (角川文庫)

コエーリョの本はこれで2冊目。以前読んだ『アルケミスト』は、主人公の視点で綴られる旅物語だったが、本書はアテナという女性を中心としつつ、彼女のことを語る人々の視点から綴られている。『アルケミスト』が直線的に進む物語であるとすれば、本書はアテナの周囲をぐるぐる回りながら、彼女をめぐる真実に近づいていくという点で、円環状の物語。しかし、根底に流れるテーマはよく似ているように感じた。

そのテーマとは、人生の意味、あるいは夢を追うことの大切さ。こう書いてしまうと陳腐極まりないが、物語仕立てにしてあると、案外そのことがスーッと入ってくるから不思議なものだ。もっとも、夢を追い、真実の人生を生きることは、周囲から見れば「変わり者」の道を歩むことを意味することが多い。(私も含め)たいていの人はそこで挫折し、自分をごまかして「無難な」一生を送ることになるのだが、そんな人生にとってコエーリョの小説はイタイ。

そして、これも『アルケミスト』でも感じたこととカブるが、コエーリョが示す「夢」は、単なる個人の願望にとどまるわけではない。夢を追う人生は、不思議なことに他者の人生や世界の秘密と深いところでつながり、それまでと違ったかたちで世界と関わることを可能にする。おそらく、そこが単なる「欲望」との違いなのだろう。しかし、一方でそうした人生は、周囲の人々にとってはある種の脅威にもなるため、きわめてアブナイ面をもつ。特に本書のアテナのように、加減を知らずわが道を突き進む場合には……。

本書を読んでいて、なんとなく田口ランディの小説やエッセイを思い出していた。現実世界に背を向けて精神的な深みの世界に降りていくような、スピリチュアルなテイストがどこか似ている。もっとも、田口ランディはコエーリョほどポジティブではなく、むしろ否応なくそうした領域に足を突っ込む人々が描かれているような気がする。逆に言えば、「スピリチュアル+ポジティブ」がコエーリョの世界観、人生観ということになるだろうか。個人的には、スピリチュアルな世界は「暗がり」に存在するものであってほしいので、コエーリョよりは田口ランディのほうに共感をおぼえるのだが、まあ、そのへんは好みの問題だろう。日本とブラジルの違い(コエーリョはブラジル人)も、ひょっとしたら何か関係しているのかもしれない。

アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア) コンセント (幻冬舎文庫)