自治体職員の読書ノート

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【1060冊目】椎名誠『本の雑誌血風録』

本の雑誌血風録 (新潮文庫)

本の雑誌血風録 (新潮文庫)

本探しの「ネタ元」のひとつとして、「本の雑誌」は重宝している。沢野ひとしのイラストの独特の雰囲気と、とにかく本を読んでいれば幸せ! という気分に満ちあふれた脱力系の誌面づくりが良い味を出している……が、そこに至るまでにはいろんな紆余曲折があったことが、本書を読むとよくわかる。

本書はそんな「本の雑誌」を立ち上げた椎名誠が綴った「自伝」で、位置づけとしては『哀愁の町に霧が降るのだ』『新橋烏森口青春篇』『銀座のカラス』に続く第4弾になるらしい。重症活字中毒者の目黒、奇人イラストレーター沢野、沈着冷静な弁護士木村と、なんともいえない「濃い」メンバーが揃いもそろって、本業のかたわら、ほとんど遊び半分で手掛けた雑誌。それが「本の雑誌」のはじまりだった。

ところがこれが、最初は書店廻りをしても置いてもらえなかったのが、どんどん人気が高まり、遊び半分が遊び半分ではすまなくなる。本業を他にもちながらの雑誌製作のはずが、どんどん「雑誌」のほうがメインとなっていき、あわせてライターとしての著者も注目されはじめ、注文がどんどん舞い込んでくる。勢いに乗っているというより、流れに押し流されている感じだ。そんな中で著者が感じた戸惑いが、本書では実にストレートに、嫌味なく語られている。

また、著者自身のライターとしての人生もまた、この時期に開花していく。『さらば国分寺書店のオババ』のヒット、『わしらはあやしい探検隊』の誕生秘話など、椎名ファン垂涎の裏話がびっしり。もっとも、椎名ファンならこの「自伝4部作」は必読書だろうから、こんなことは言うまでもないんでしょうけどね。

むしろ「仕事」と「遊び」を分けて考えすぎているマジメな方々にこそ、この希代の遊び上手の日々が、良いクスリになるのかもしれない。あ、言うまでもなく「本の雑誌」愛読者にとっては、これは必読の「副読本」。個人的には「本を読む時間がないから会社を辞めた」目黒に深く共感。目黒=北上次郎の書評センスは、このへんから発露していたんですねえ。

哀愁の町に霧が降るのだ〈上巻〉 (新潮文庫)新橋烏森口青春篇 (新潮文庫)銀座のカラス〈上〉 (新潮文庫)さらば国分寺書店のオババ (新潮文庫)わしらは怪しい探険隊 (角川文庫)