自治体職員の読書ノート

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【1058冊目】本橋成一『アレクセイと泉のはなし』

アレクセイと泉のはなし

アレクセイと泉のはなし

アレクセイの住む村では、みんな命がつながっている。馬、鶏、犬、畑、人。そのつながりの中でみんな生きていることを知っているから、アレクセイたちは村を離れない。180キロ彼方のチェルノブイリ原子力発電所が爆発し、政府が退去命令を出し、たくさんの村人が村を離れても……。

著者は写真家で、映画「アレクセイの泉」の監督でもある。本書はその映画をベースにした写真絵本。写されているのは、一見のどかで平和なベラルーシの農村風景。そこが放射能に汚染され、多くの人々が村を去った後の光景だなんて、何度見ても信じられない。

だがまぎれもなく、それは「チェルノブイリ」の放射能の傘の下にある村なのだ。目に見えず、匂いもかぐことができず、しかし徐々に身体をむしばまれていく。

そんな中、彼らが「命のリレー」をつなげていけるのは、村の地下から湧きだす泉が放射能に汚染されず、きれいなままであるためだ。自然の恵みをいただき、昔ながらの日々を送る55人の人々。彼らの表情からは、とりたてて気負いや覚悟をうかがうことはできない。

感じられるのは、放射能があろうがなかろうが、そこが彼らの、動物や植物、水や土とつながった「いのちの循環」の場所であるという、あまりにも自然で当然の確信だけ。そこには、いっさいの安易な批評や知ったかぶりの評価をさしはさむことさえできない。私にできることは、大地に結びついた生活のつよさと尊さを、あらためてかみしめるだけ。



役人がきて、
村は危険だから
早く引っ越しなさい、
とすすめたとき、
母さんは言った。
「この動物たちは、
木や草は
どうするんだい。
いっしょに連れていっても
いいのかい?」





原子力発電所ができると、
生活がもっと豊かになるって、
教えられた。
でも、ぼくの村は、
ほんの少しの電気で
とても豊かだったし、
いまでもみんな満足している。
この村には、
いのちが育つのに必要なものは、
なんでもそろっている。
ただひとつ、
要らないものは、
人間が作った放射能だけ。