自治体職員の読書ノート

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【1056冊目】片山善博・津久井進『災害復興とそのミッション』

災害復興とそのミッション―復興と憲法

災害復興とそのミッション―復興と憲法

総務大臣で、鳥取県知事時代に大地震を経験した片山氏と、兵庫県に籍を置く弁護士で復興にも携わった津久井氏の講演録。「災害復興」と「憲法」を結びつけるという、やや意外な組み立てとなっている。

しかし、読んでいると両者のつながりは全然「意外」ではなく、むしろ深い関係があることがわかる。特に、憲法がそもそも戦災からの復興という期待を背負って生まれたという経緯から、災害復興法として憲法をとらえるという発想には、なるほどと思わせられた。

言われてみればたしかに、憲法制定当時の日本はまさに焼け野原の状態であり、そこからの「復興」こそが国民の願いだったワケで、憲法はそんな状況のもとで登場したのだ。条件はいろいろ違うだろうが、そうした憲法制定前夜の状況は、東日本大震災後の東北と似ていると言えなくもない。

言い換えれば、震災からの復興を考える際には、一見「遠い」存在に思える憲法の理念が、実は復興のガイドラインであり、踏み外してはならない道筋なのだ。しかし、実際には著者らが経験してきた阪神淡路大震災鳥取県西部地震では、そんな理想とはほど遠い現状があった。非常時にもかかわらず、タテワリで流れてくる国の補助金。県独自の住宅再建支援に、言うに事欠いて「憲法違反だ」とねじ込んできた国の官僚。仮設住宅を自宅の庭に建て、そのまま供与したほうが合理的なのに、公有地でないと建てられない、2年経ったら公費で撤去しなければならないと言い張る官僚……。

そうした的外れな対応の背景には、災害復興のミッションが共有されていないという問題がある、と片山氏は指摘する。そのミッションこそが被災者の救済であり、そのための理念の枠組みとなるのが憲法である。

そこにズレがあるから、的外れな対応、先例主義で制度ありきの運用がまかりとおる。本書は、二つの大震災の教訓から、「災害復興の本来」を模索する一冊。東日本大震災も、復興に向けて少しずつ動きが出てきている今だからこそ、その基本路線が「ミッション」を踏み外したピント外れのものにならないようウォッチしていきたい。

それにしても、片山氏はまさかその後、自身が総務大臣になり、しかもその時にこんな未曾有の災害に見舞われるとは思ってもいなかったでしょうねえ。