自治体職員の読書ノート

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【1045冊目】加藤晋介『加藤晋介の行政法入門』

加藤晋介の行政法入門

加藤晋介の行政法入門

行政法の入門書はいろいろあるが、中でもこの本はかなりよくできている。

著者は司法試験予備校として有名な辰巳法律研究所の名物講師。司法試験予備校の講師が書いたテキストと言うと、受験テクニックに偏った論点主義のテキストなどを連想される方もおられるかもしれないが、この人のものは一味違う。むしろ行政法の本質をきちんと捕まえ、原理原則を踏まえて展開されるかなり質の高い教科書となっている。200頁に満たない薄さながら、議論となっている部分や重要な判例にもバランス良く触れており、何よりリーダビリティが高い。そのへんは学者の書くテキストにはなかなか見られない長所であろう。これは新司法試験の受験生だけに読ませておくのはもったいない本である。

重きが置かれているのは、全体の半分を占める行政救済法。特に行政訴訟についてはかなり厚く記述されており、入門書の枠を超えていると思われる部分も。また、憲法との関連性を常に意識して書かれているのも特徴であり、憲法の復習にも役立つ。そもそも、憲法の背後にある近代市民社会の歴史は、同時に現在のような行政システムを生んできた母胎でもあるのだから、これは関連性があって当たり前なのだ。憲法の背景を理解することは、同時に行政・行政法の背景を理解することでもあるわけだ。

読み手として意識されているのは再三書いているように新司法試験受験生であり、つまりは未来の法曹に向けて書かれているのだが、自治体職員が読んでも十分役に立つ。行政法というと、部署によってはなかなか実務の現場との接点がイメージしづらいかもしれないが、本書を読むとそのあたりがナチュラルにつながってくる。逆に言うと、ふだんの実務の中のどこに行政法が「埋まっている」かが見えてくるのである。要するに言いたいことは、司法試験予備校の講師が書いたものだからといってバカにせず、ご一読あれ、ということ。特に4月に就職された新人さんにオススメしたい。