自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【1037冊目】河田惠昭『これからの防災・減災がわかる本』

これからの防災・減災がわかる本 (岩波ジュニア新書)

これからの防災・減災がわかる本 (岩波ジュニア新書)

今の時点でこういう本を読むのは、正直ややツライ。だが、「今何が起きているのか」を俯瞰するために、今こそ手に取るべき本でもある。

あれほどの大災害を実際に(テレビ越しであっても)目の当たりにすると、防災対策とか災害対策とかいう言葉自体がむなしく響く。100パーセント、ありとあらゆる「起きうる」災害に備えようとしたらキリがない。最後は必ず、どこまでやるかという線引きの問題になってくる。特に今回大きな被害を受けた東北地方太平洋側は、名だたる「津波常襲地帯」であり、言い換えれば津波の恐ろしさを知りつくし、採りうる対策を採りつくしているはずの場所であった。それでもこれほどのすさまじい被害である。全国の防災担当者は、おそらく今後の災害対策をどうすべきか、途方に暮れているに違いない。

この本は当然ながら今回の地震前に書かれた本であり、阪神・淡路や中越地方の地震のケースなどを取り上げつつ、「減災」を基本に、災害への向き合いかたを論じた一冊。ジュニア新書だが、大人が読んでもかなり読み応えがある内容で、国家レベル、行政レベル、さらには個人のレベルで、いつ起きるかわからないがいつ起きてもおかしくない「災害」というものへの向き合いかたを分かりやすく示すものとなっている。上に書いた「線引き」の点でもたいへんバランスのとれた考え方が述べられており、自治体職員にとっても、災害対策行政のひとつの基準点を明らかにしてくれている。

印象に残ったのは、「自助・共助・公助」について、災害前には「1:2:7」くらいの割合になることが期待されているのだが、実際には「7:2:1」になってしまうという指摘。つまり、国や地方がやれることは想像以上に限られており、その分は自力で、あるいはボランティアやコミュニティの助けを借りて穴埋めをしなければならないというのである。まさにその現象が、現下の東北地方で起きている。行政が実際にできることはせいぜい1割なのである。

とまあこんな感じに、今この種の本を読むと、どうしてもその内容と実際の状況を比較してしまう。読むのがツライのはその点だ。なんだか後出しジャンケンのようでもあり、一方的に採点をしているようでもある。そういう読み方が好きな方もおられるかもしれないが、私はどうも読んでいて虚しさを感じてしまった。だが、本書自体は(後出し採点をしたとしても)たいへん充実した内容。この日本に住む以上、われわれは永遠に災害から逃れることはできないのだから、「次の災害」の時のためにも、読んでおいて損はない。