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自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【1036冊目】森見登美彦『四畳半神話体系』

笑い・遊び・ゆるさ

四畳半神話大系 (角川文庫)

四畳半神話大系 (角川文庫)

第1章は懐かしく、第2章で仰天し、第3章で大笑い、第4章で驚倒した。

くだらん悪ふざけやロクでもない悪事ばかりの、無意義を極めるキャンパスライフ。主人公の日々が、そっくりそのままわが学生生活に重なり合う。そうそう、そうなんだよね〜。有意義なこととか、ためになることなんか、意地でもやりたくないんだよね。それよりも、無意味と無意義にどっぷり首まで漬かり、死ぬほどくだらないことにうつつを抜かし、怠惰な時間をだらだらつぶす、そんな日々こそ今となっては懐かしい。それにしても、悔いが残るのは下宿生活をしなかったこと。やはり私も、意地でも遠くの大学に通い、四畳半で暮らすべきだった。

そんな(どんなだ)第1章がつつがなく終わり、驚いたのは第2章。なんと第1章と同じ書き出し、主人公が新1年生に戻るところから始まるのだ。違うのは、第1章では映画サークル「みそぎ」を選んだ主人公が、第2章では「弟子求ム」という怪しげなチラシに釣られるところ。そう、この小説は4つの章のそれぞれが、主人公のサークル選択に応じた4つのパラレルワールドになっているのだ。

パラレルワールドといっても、重なり合うところは多い。どんな進路をたどっても、主人公は小津に出会って巻き込まれるし、怪しげな婆さんの占いを受けるし、下宿の部屋は水浸しになるし、明石さんとは結ばれる。それも、ポイントごとにまったく同じ文章が出てくるのが面白い。だいたい、この人の文章はクセになる。独特の、感染力の高い文章だ。

それに続く第3章は同じようなパラレルワールド。その意味で予定調和。それが崩れるのが第4章だ。何が起きるかは、読んでみてのお楽しみ。量子力学多世界解釈って、こういうことだろうか? まあいずれにせよ、たいへん楽しめる小説であった。森見作品で通読したのは、実は本書が初めてだったのだが、この「語りの業」と「騙りの技」はすばらしい。腐れキャンパスライフという舞台の中ですっとぼけてはいるが、これは相当の「技」の持ち主である。そのうちまた、いろいろ読んでみたい。