自治体職員の読書ノート

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【1022冊目】神野直彦・高橋伸彰編『脱成長の地域再生』

脱成長の地域再生

脱成長の地域再生

職読。「地域再生」をキーワードに、6つの論考が収められている。

本書をつらぬくテーマが、高橋氏の「はじめに」で示されている。高橋氏は、日本各地で起こっている地域衰退の理由について、日本経済(特に都市部)の発展に遅れをとったというよりは、むしろさまざまな要因によって地域社会の「つながり」が断ち切られたためとみる。そのため、必要なのは地域という「場」を能動的に回復することである、と。ここで明確に否定されているのは、経済成長が地域活性化につながる、という発想だ。

なぜそういう問題設定をするのか。歴史をさかのぼりつつ、そのことを具体的に解きほぐしているのが、続く神野氏の「序章」である。もともと、1960年代以降のいわゆる「全総」は、日本各地に工場機能を分散し、それらをつなぐインフラを整備することで、経済成長と日本全体の活性化をリンクさせるという発想に立っていた。しかし、90年代頃から工場立地が海外へとフライトし、国内には管理機能だけが残るようになった。地方の工場や支社は閉鎖され、東京の本社機能だけが強化され、結果として極端なほどの東京一極集中が起きた。

本書が「脱成長」を掲げるのは、冒頭にもどるが、こうした状況のもとでは経済成長がもはや地域活性化にリンクしない、という強い認識があるからだ。では、地域の衰退を食い止めるために、具体的にどのようにすればよいのか。本書はテーマごとに、6通りの処方箋を示している。扱われているテーマは税構造の問題、医療や年金の危機(特に国保)、市民参加、コミュニティなど幅広い。

面白いと思ったのは第2章の、国保をテコとした改革案。確かに、現在の国保は都市型貧困対策としてはほとんど機能していないといってよい。そこに着目して社会保障制度全体のシフト・チェンジを構想するところ、なかなか読み応えがある。

また、第5章の「生活公共」という発想、第6章の「参加ガバナンス」という視点にも共感できた。前者については、「社会」(social)という概念が自立した個人を前提とした欧米型市民社会を前提としており、日本ではむしろ個人、家族、地域集団などを含む「生活」としたほうがよいのでは、という指摘は鋭い。後者については、自治体の議会と首長(行政)が参加と合意形成の仕組みを整備し、多様な市民(理念形としての市民ではなく、現実に活動しているNPOや社会団体など)が政策づくりに携わるという思い切った役割分担がわかりやすくて良い。あいまいな協働論とは一線を画している。

全体的に、いささか王道を行き過ぎている感じもするが、現在の経済、社会、政治、地域の関係をどうすればよいのか、その「関係線」が見えてくる一冊。勉強になりました。