自治体職員の読書ノート

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【1020冊目】布施哲也『官製ワーキングプア』

官製ワーキングプア―自治体の非正規雇用と民間委託

官製ワーキングプア―自治体の非正規雇用と民間委託

職読。ただし本書自体のデキについては、正直に書くと名誉棄損だなんだと言われそうなので、あえて突っ込まない。まあ、察していただきたい。読み終わったときの印象は、村上春樹ふうに書くと「やれやれ」という感じ。

とはいえ、この「官製ワーキングプア」問題自体はとっても重要だ。思いつき程度に、ざっくり論点を整理してみる。第一に、ワーキングプアという「現象」が社会問題となる中で、そうした社会問題の解決を志向すべき役所という組織が自らワーキングプアを生みだすことが許されるのか、という問題がある。第二に、税金によって運営されている役所である以上、そうは言っても最低限のコスト(人件費)で同じ業務ができるならそのほうがよいではないか、という議論がある。これについては、それではそもそも役人の給与水準の適正なラインとはどのあたりなのか、という問題が絡んでくる。第三に、そもそも臨時職員等の制度が「一時的な正規職員の欠員」を穴埋めするためのいわば緊急避難的な短期雇用の制度であるにも関わらず、これが更新を繰り返すことで恒常的な雇用に成り変わっている、という制度と現実の齟齬がある。

制度上の矛盾である第三の論点はともかく、第一の論点と第二の論点は、その水準がややずれているところにややこしさがある。第二の論点はいわば個々の役所における「最適」をどのレベルに求めるか、という議論だ。それに対して第一の論点は、個々の役所が最適レベルを選択した場合に起きる「合成の誤謬」の話である。したがって、問題は個々の組織が最適を追求した結果発生する合成の誤謬を回避するために、個々の組織レベルにおいて一定の抑止を図るにはどうすればよいか、ということになってくるのだが、そしてこれは公共部門に限らず、民間の雇用でも起きていることなのだが、いずれにせよ、一つ言えるのは、個々の組織レベルでの解決は、こうした図式の問題においては小手先のものにしかならない、ということ。これはいわば「審級」の異なる問題なのだから、それに合わせたレベルでの対応をしなければならない。本来、それをやるのが政治であり、政府の役割であるはずなのだが……経団連の言うことを聞いている場合ではないのである。

実はこの先が長いのだが、「読書ノート」の枠を超えるのでやめておく。自治体の雇用問題については、天下りとか労働基本権の問題も絡めて、一度しっかり考えてみたい。粗雑な問題提起でスミマセン。