自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【1018冊目】日本地方自治研究学会編『地方自治の最前線』

地方自治の最前線

地方自治の最前線

職読。前に本屋で見かけて衝動的に買ったものの、とっつきづらくてずっと積んであった本。内容は地方自治に関する論文集のようなもの。「行政部門」「財政部門」「会計部門」の三部立てになっている。著者はいずれも編者である日本地方自治研究学会の会員らしいが、「財政」「会計」のウェイトが大きいのが特徴か。確かに重要な分野ではあるが、この種の本で財政・会計が全体の過半を占めるというのはめずらしい。

収められている論考は、全部で18。著者には学者だけでなく公認会計士の方も含まれており、並べて読むと、申し訳ないがその水準にはかなりばらつきがある。中には、どれとは言わないが日本語としていかがなものか、と思わざるをえない残念なものもあり、一方ではかなり学ぶべき点の多いものもある。一つだけ読めばそうは感じないのかもしれないが、並べて読むとそのあたりは歴然。論文集の類のもつ怖さであろう。

「行政部門」では地方分権の基礎的な知識から地域コミュニティ、情報化など幅広いテーマが扱われている。個人的には地域ポータルサイトについて記した第5章が興味深かった。第6章はセンゲの組織論がベースになっているが、センゲの『最強組織の法則』は以前読んだはずなのに全然忘れていた。ショック。

「財政部門」は国と地方をめぐる財政問題を扱う。似たような内容の論文が並ぶが、粒はそろっている。まあ、この点については議論の広がりを求める方が無理というものだろう。基本的な知識と歴史的経緯を確認するには役立つ。

「会計部門」は主に公会計改革を扱う。発生主義会計の重要性については知っているつもりだったが、特に第18章を読んで改めてその意義を認識できたのは収穫だった。また、自治体の内部統制に触れた第15章も興味を惹かれるものがあった。一方、論文の体をなしていない章が最も多かったのもこの部門。個人的には15章と18章だけ読めば良いかと。