自治体職員の読書ノート

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【998冊目】『江戸川乱歩短編集』

江戸川乱歩短篇集 (岩波文庫)

江戸川乱歩短篇集 (岩波文庫)

江戸川乱歩岩波文庫に入ったことに、まずびっくりした。

私の世代にとって、乱歩と言えばなんといってもポプラ社の「少年探偵団」シリーズである。最初の『怪人二十面相』を読んだのは、確か小学校の6年生頃だった。夏休み、ひと駅となりの図書館に日参し、ずらりと並んでいたこのシリーズを読みふけっていたのを思い出す。

少年探偵団―少年探偵 (ポプラ文庫クラシック)

少年探偵団―少年探偵 (ポプラ文庫クラシック)

その後はドイル、クイーン、クリスティと進み、乱歩のことはなんとなく忘れていた。大人になってから、今度は大人向けの小説を読み、その淫猥で奇怪な世界観に連れ去られた。「陰獣」「人間椅子」「芋虫」「パノラマ島奇談」……。ミステリというより、エログロのあやしげな魅力は、どこかつくりものめいてチープなだけにかえって魅惑的だった。そして、さすがに伏字連発の部分はないにせよ、その世界観を子供向けにアレンジしつつ、しっかり伝えていたポプラ社のシリーズはたいしたものだと思った覚えがある。

いかんいかん。乱歩について書こうと思うとどうしても思い出話になってしまう。言いたかったのは、そういうあやしげである種B級感覚漂う乱歩の世界が「由緒正しき」岩波文庫に入ったことにびっくりした、ということだ。しかも「屋根裏の散歩者」も「人間椅子」も「鏡地獄」も「押絵と旅する男」も入っている。万々歳である。

初読のものもあった。驚いたのは「お勢登場」。人間の悪意の瞬発性のようなもの、瞬間の「悪の発露」が、引っ込みがつかなくなることによって「本当の悪」に変化していくさまは、他のエログロむき出しの小説よりはるかに恐ろしい。