自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【979冊目】大塚康男『自治体職員が知っておきたい債権管理術』

自治体職員がもっともよく知っておかなければならない法律は、「民法」だとつねづね思っている。

地方自治法や行訴法、行政手続条例や情報公開条例など、行政法の必要性はよく言われる。しかし、実務においてよく使う法律をランキングしてみれば、トップに躍り出るのは民法ではないだろうか。代理や委任の法理、成年後見制度、契約に関するルール、親族法や相続法など、民法にかかわりのない行政実務はほとんどないと言ってよい。中でも特に悩ましいのが、本書で扱われている債権管理に関する規定である。

いろいろな収入源がある中で、地方税国保・介護などの保険料収入などについては、きちんとした個別ルールがあり、担当部署にも相当のノウハウが蓄積されている。ところが、それ以外にも自治体はさまざまな「債権」をもっている。手数料や使用料、貸付金から給食費まで、その種類は千差万別。しかもその管理のルールやノウハウについては、自治体や各部署によって相当なバラツキがあるように思う。

本書はそうした債権管理のルールとノウハウを、Q&A方式でわかりやすくまとめた一冊。公債権と私債権それぞれのルールの違いから、督促・訴訟・執行などの具体的な手続きまで、おそらく現場で必要な要素はすべて入っている。そこで大活躍するのが、冒頭に挙げた「民法」と、その手続法である民事訴訟法。私は本書を、すっかり忘れてしまった債権法と民事訴訟法の復習として読んだ。個々のテキストを読んでもなかなか頭に入ってこない民法地方自治法のかかわりも、本書ではすっきりとまとめられている。