自治体職員の読書ノート

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【951冊目】田島信威・高久泰文『市町村条例クリニック』

市町村条例クリニック

市町村条例クリニック

条例のケーススタディ。法務担当の舞台裏。「てにをは」から「政策法務」まで、法規審査をめぐる舞台裏が見える。

この本はケッサク。第一編「総論」は通り一遍でつまらないが、第二編「条例批評」は目が覚めた。条例のサンプルを掲げて、冒頭からばしばし斬っていくのだが、そのテンポが小気味よい。同時に、法令審査の考え方というものがどういうモノか、よく分かる。

面白いのは、単なる文言の修正に見える法令審査が、実は条例の背後にある政策そのものの考え方や事業の進め方に直結していること。特に「○○市写真撮影業者に関する条例」など、そもそも条例の前提になっている写真撮影業者の資格試験・許可制度そのものの妥当性が問題視されている。

こうなってくると、法規審査がすなわち事業自体の法適合性や法的妥当性の審査になってくるわけで、実は条例原案ができてからこうしたことを審査するとなると、タイミングが遅いということがままあるように思う。むしろ事業自体の立ち上げの時点で法的視点からの検討をかませておくべきなのだろうが、なかなかそこまで思い至る所管部署というのは多くないのが現実では。

むしろ、政策段階で企画部門や財政部門、首長や議会の調整をすっかり済ませてしまい、そのあとでやっとこさ具体的な条例案をつくり、それが法規審査担当に持ち込まれるという展開が「ありがち」なパターンではないか。条例自体の存在意義にかかわるということは稀かもしれないが、条例の中身を詰めていくなかで具体的な対象者や要件や規制方法などを明確化していくことは、おそらく決して珍しくない。その結果、フタを開けてみたら課長が議会を回って根回ししたのと全然違う内容になっていたりして……。

それはともかく、本書のように具体的な条例審査の発想をリアルに書いた本を他に知らない。法規審査担当者のみならず、政策立案や条例制定にかかわる人も、一読して損はないと思う。掲げられている条例案の「できの悪さ」には思わず笑ってしまうが、いやいや、自分で作るとこういうことってよくあるのだ。ヒトゴトではない。