自治体職員の読書ノート

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【932冊目】釋英勝『モンキーピープル』

モンキーピープル 1 (ヤングジャンプコミックス)

モンキーピープル 1 (ヤングジャンプコミックス)

ジャングルの奥地で発見されたコオロギは、癌もエイズもインフルエンザも治す「夢の新薬」となるものだった。しかし、同時にそれは、噛まれた人を殺す殺人コオロギ。その扱いをめぐり、製薬会社の研究者たちの、ドロドロの欲と思惑が絡まり合う……。

ビジネスジャンプ』で連載中のマンガで、コミックスも5巻まで出ている。内容的にはむしろ「これから」の作品だと思うのだが、現時点ですでに、読み手の好き嫌いがハッキリ分かれそうな作品。

救いのないブラックな展開、非常にクセのある画、ぎこちなくテンポの悪いコマ割りやストーリー展開。そのへんに入りにくさを感じる人も多いと思うのだが、一方で、いったんハマるとそんなことはどうでもよくなるくらいのパワーがある。報奨金に目がくらんでコオロギの危険性を甘く見る研究員たち、会社の利益のためには公益も人命も無視する製薬会社のトップ。そんな救いがたい連中の手の中で、殺人コオロギは育てられる。

冒頭にも書いたがこのコオロギ、薬になれば病気を治すが、同時に噛んだ人間を死に至らしめるという、正と負の機能を背中合わせに持ち合わせている。思えば「こういうもの」って、われわれの周囲にはけっこう多い。自動車も原子力も麻薬も合成洗剤もデモクラシーも資本主義も、「有用であると同時に危険」なものだ。そして、こうした「有用で危険」なものを前にすると、われわれは得てして「有用」のほうにばかり目がいき、「危険」のほうは、それなりに意識はするものの後回しになりやすい。本書に出てくる殺人コオロギはそのいわばシンボル的存在であり、人間の愚かしさやあさましさを映し出す鏡のように機能している。

おそらく本書は、賞をとったり世に評価されたりするタイプの作品ではない。しかし、完結した暁には、知る人ぞ知る「問題作」として、長く読み継がれる漫画になるのではなかろうか。今からそんな気がしてならない作品だ。