自治体職員の読書ノート

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【892冊目】加藤幸雄『市町村議会の常識』

市町村議会の常識―「知らなかった」ではすまされない

市町村議会の常識―「知らなかった」ではすまされない

行政の立場に身を置いていると、議会という存在の位置づけが、時々わからなくなる。

タテマエとしては、よくわかる。地方自治体の議決機関であり、首長と並ぶ住民の代表であり、行政のチェック機関である。しかし、そういう制度上のポジションと、現実にわれわれが向き合っている「議会」なるもののリアリティには、どこか微妙なズレがあるような気がしている。行政内部から見えている「議会」というものの実態と、制度上の(あるいは地方自治法上の)「議会」の概念は、必ずしも一致していない。

別にそういうことって、珍しいコトではない。むしろ「制度」としてのタテマエと、「実態」としてのリアリズムは、多少のズレを含んでいるのが当然だ。個人的に気になっているのは、この両者をつなぐブリッジがなかなか見えないことなのだ。そもそも議会とはどういうもので、地方自治という全体のフレームの中でどういう位置づけにあって、現実にどういう機能を果たしているのか。そのへんについて、ある程度「実感として」自分なりに見えてはいるものの、それを補強するロジックが読みたかった。本書を読もうと思ったのは、そういう思惑があったからだ。

で、この本がどうだったかということは……まあ、多くは言うまい。正直、お薦めできるという類の本ではない。とにかく、文章がひどい。てにをはを含め、日本語としてなっていないところがたくさんある。たとえば、これは「はじめに」の冒頭、つまり本書全体のオープニングのうちの一部を抜粋したもの。

「…『住民に最も身近な』という形容詞が意味を失いつつある。市町村合併、『平成の大合併』は、地方自治、住民自治の基盤を揺り動かしつつあることに懸念を抱いている。」


……誰が?

主語がない。

まあ、本書全部がこのレベル。著者の経歴を拝見すると「全国市議会議長会事務局」で勤務され、調査広報部長を務められたとのことだが、う〜ん、それでこの文章力はちょっとマズイんじゃなかろうか。意地悪な言い方をすれば、こういう方が全国市議会議長会事務局の部長職を務められてしまうという事実が、「議会事務局」の質の低下、という本書の中でも触れられている問題の存在を、間接的に証明してしまっている。

他にも明らかな事実関係の間違いが散見され、それもかなり気になった。例えば地方の「超過負担」に関する説明が間違っているし、「法定受託事務」についても、地方自治法別表に列挙されていることをご存知ないかのような記載がある。議会関係の記述には間違いがないと信じたいが、他の部分がこの調子では、と心配になってしまう。

書かれていることは議会関係の基礎知識レベルで、まあ「知らなかったではすまされない」と大言壮語するほどではないが、常識には違いない。読みたかったのはそこから先の突っ込んだ制度論や現実論だったのだが、それを期待できるような内容では、到底なかった。残念。