自治体職員の読書ノート

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【885冊目】太田雅幸・吉田利宏『政策立案者のための条例づくり入門』

政策立案者のための条例づくり入門

政策立案者のための条例づくり入門

政策法務」「攻めの法務」とよく言われるが、具体的に何をすればよいのかよくわからない、という方のための一冊。「政策を条例に落とし込む」という作業がどういうもので、その中のどこに「政策法務」が潜んでいるのか、とてもよくわかる。

現場の声をくみ上げつつ政策を練るところから、法的思考のあり方、「分かりやすさ」について、法律との関係などの立法論の基礎、基本的な法制用語論、さらには議会との関係と、とにかく「政策を条例につなげる」ための思考方法とノウハウの陳列棚である。しかも具体的な条文の例が豊富に挙げられており、議論も地に足がついており、実にわかりやすい。政策法務論というと、得てして理念に走って現実とのつながりが見えなくなってしまうものが多いのだが、本書は全く違う。たいへんよくできている。

特に、放置自転車対策という「ありがち」な政策課題を例に「政策課題と法務との関係」をときほぐして解説した第2章は面白かった。法律や他の自治体の例を横目でうかがうばかりではダメだが、だからといって何でも猪突猛進すればよいというものでもない。そこに「規定されていない」のには、規定されていないだけの理由があるのではないか、とまず考えることが大事。しかし、それをきちんと考えた上で、なおかつ政策課題の解決のために必要と思われるなら、躊躇なく条例化に邁進すればよい。そのあたりのバランス感覚はなかなか捕まえにくい(どうしても「守り」に入ってしまいやすい)のだが、本書はそこのところをまさに「かゆいところに手が届く」的確さで示してくれている。

また、第4章「政策と条例をつなごう」は、各自治体の先進的な条例が解説入りでずらりと並んでいるのだが、なるほど、条例でここまでできるのか、という「政策課題解決手段としての条例の幅広さ」を俯瞰することができて刺激的だ。手段別、という並べ方もユニークだが、あくまで条例は課題解決の手段なのだから、まさしくその本質に沿った配列といえよう。面白かったのは「議会との妥協点を探る」というパートで、修正、施行の先送り、施行の凍結、附帯決議など、かなり生々しいテーマがずらりと並んでいて、裏側にどういうバトルがあったのか想像するとなかなか楽しい(恐ろしい?)。

ということで、本書はかなりの「お薦め」。特に、法制担当課のみならず、事業課の職員こそ読んでおくとよい一冊だと思う。