自治体職員の読書ノート

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【876冊目】綾辻行人『Another』

Another

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綾辻行人の小説は、10年ほど前に何冊か読んだきりだった。確か、いわゆる「新本格」系統の『十角館の殺人』『霧越邸殺人事件』など数冊と、ホラー系の『殺人鬼』だったと思う。本格推理小説へのコダワリと独特のおどろおどろしい雰囲気は嫌いじゃなかったが、のめり込むほどではなく、その後はすっかり遠ざかっていた。この『Another』は、したがって10年ぶりに読む綾辻行人、ということになる。

最初にちょっと戸惑ったのは、これはホラーなのか、ミステリなのか、という点だった。つまり、不可思議なことが起きた時に、「それはそういうもの」として許容して読んだほうがいいのか、「謎解き」を前提として、つまり「何らかの合理的な説明が下される」ものとして読んだ方がいいのか、という、読み手のスタンスがなかなか固まらなかったのだ。

もっともこの点については、最初の犠牲者が出るあたりで「どう考えてもこれは合理的な説明がつく話ではない」と確信がもてたので、一応「ホラー」として読み進めることに。ホラーといってもいわゆる「学園ホラー」のテイストで、「学園」からすっかり遠ざかってしまった我が身としてはそれほどのめり込めなかった。しかも、ホラーなのに一部ミステリの要素が混じっていて、えっ、どっちなの? という感じ。ホラーとミステリの融合というスタイルは面白いと思うのだが、あくまで現実世界での合理的解決を前提とするミステリと超自然的要素を前提とするホラー(もちろん、そうではないホラーもあるが、本書は超自然ホラー)をブレンドさせるのは、やはり冒険というべきだろう。

とはいえ、本書自体がツマラナイかというと、そんなことはない。むしろストーリーテリングの妙で一気に読ませるだけの力をもった小説だ。細部で気になる部分がないではないが、著者の筆力が、そんなことを気にさせないほど読み手をぐいぐい引っ張っていく。以前読んだときはこれほどの「剛腕」の持ち主ではなかったような気がするが……。当時はそのへんを読み落としていたのか、あるいは著者自身の成長なのか。今後、この作風がどんなふうに展開していくのか、なかなか楽しみだ。