自治体職員の読書ノート

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【875冊目】中野雅至『公務員大崩落』

公務員大崩落 (朝日新書)

公務員大崩落 (朝日新書)

前著『公務員クビ!論』に引き続き、公務員ギョーカイの未来をシビアに予測する一冊。

政権交代後、間もない時期に書かれているだけあって、民主党政権が実現したことによる国家公務員の今後の予測がなかなか面白い。「天皇官吏」であった戦前はともかく、戦後の国家公務員制度の歴史の中で、政権が変わるというのはほぼ初めての事態であった。それが意味するのは、それまでの「族議員−省庁−業界団体」のいわゆる政官財癒着構造が崩れる、というだけではない。官僚への政治の関与が強まることが予想される現状では、二大政党制になることによって、これまで以上に官僚が政治的要因に左右されることになる。そのあたりの「今後」の予想図を、本書はものすごくリアルに描き出しいる。(もっとも、今の自民党民主党の現状をみていると、単純な二大政党制の時代が訪れるとは思えなくなってきている。むしろ両党が仲良く地盤沈下している中で、小党乱立の混沌とした時代がやってくるとみた方が良いかもしれない)

また、地方公務員の今後については我が事であってとても気になるところなのだが、こちらはそれほど目新しいトピックがあるわけではなく、前著に続いて「地方公務員の悲哀」を予想するものとなっている。「誰がトップでも住民から選ばれた代表に従う」という当たり前のことを再確認すること、「自分は○○がやりたい」という熱意を持つ人はむしろ政治家になったほうがよいことなど、これから地方公務員を目指そうという人にはかなり悲観的な指摘が並んでいる。それに、財政健全化が求められる一方、高齢化が進む中で行政経費は増大し、地方公務員の給料がその中で翻弄されている、というのも確かにそのとおり。ごもっとも、である。

そう、指摘されていることはいちいちごもっとも、そのとおり。地方公務員の給料を地域の中小零細企業並みにしろ、というのもおっしゃるとおり、地方に回すお金は切るけど仕事は増える、という現状もまあやむなし、どんな人であっても住民が選んだ首長には従え、というのも民主主義に照らせば圧倒的に正しい。しかしこれらの「正しさ」が指し示すところは(『公務員クビ!論』の読書ノートでも書いたが)地方公務員の質の低下である。能力が高く就職の選択肢が多い人、熱意があっていろんなことに取り組みたいと思っている人ほど、地方公務員を選ぶことはなく、選んでも若いうちなら辞めてしまうだろう。残るのは、ただ言われたことをやっているだけの、給料は安くても身分が安定していれば良しとする人ばかり、となることは想像に難くない。公務員バッシングは、実は回りまわって公務員の質を低下させるというこのパラドックス。その解決策として、本書では人事評価をしっかり行い、まずは「誰が見ても仕事がよくできる職員」と「誰が見てもどうしようもないダメ職員」の給与や待遇にはっきりした差をつけよ、としている。公務員全体を対象とするのではなく、「優秀な地方公務員」を確保するためにピンポイントで対策を講じる、というワケだ。このやり方もいろいろ難しい部分はあろうが(配属先の部署の関係で埋もれている職員とか、熱意がある「出る杭」タイプの職員をきちんと評価できるか、など)、まあ、人材確保という点からすれば、確かにそれしかないかもしれない。

他にも本書では団体職員などの「準公務員的」な存在も取り上げ、日本のパブリックセクター全体を見渡す幅広い議論を展開している。前著に引き続き、単なるバッシングでも身内擁護でもない、建設的でバランスのとれた見方には、非常に学ぶべき点が多い。それにしても、公務員制度もなんとかしなければならないが、まずはまともな議論をするために、日本のマスコミの見識の低さをなんとかしなきゃなりませんな。