自治体職員の読書ノート

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【862冊目】読売新聞生活情報部編『つながる 信頼でつくる地域コミュニティ』

つながる―信頼でつくる地域コミュニティ

つながる―信頼でつくる地域コミュニティ

  • 作者: 読売新聞生活情報部
  • 出版社/メーカー: 全国コミュニティライフサポートセンター
  • 発売日: 2008/10
  • メディア: 単行本
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読売新聞の「くらし 家庭面」での連載企画『つながる』を書籍化したもの。イベント、福祉まちづくりなど、地域コミュニティ活動の多様で多彩な事例を取り上げている。

ひとつの事例について割かれているのは4ページ程度。その中で、その活動の特徴、誰がやっているのか、経緯や変遷などがコンパクトにまとめられているのには、さすがプロの記者の文章力と感心させられる。もちろん限られたページ数であるから、一つ一つの事例の掘り下げは十分とは言えないが、それを補って余りあるのが、取り上げられている事例の多さだ。国内外からあわせて40以上という事例数は、この本の厚みにしては異例といってよいほど多い。

数多くの事例を通観することで、見えてくることもある。最初は「必要」から始まっていること。安易に既成の仕組みによりかからず、住民が自らの創意工夫で問題解決を図っていること。必ずキーパーソンがいて、人的なネットワークがそこから広がっていること。そのネットワークがきわめて柔軟でしなやかな構造をもっていること。

ほとんどの事例で、行政は登場すらしないか、後方援護的な役割に徹しているのも印象的だった。中心になっているのは地域住民そのもの。行政主体の施策では「サービスの受け手」として扱われてしまいがちな彼らが、ここではサービスの供給者兼受益者となっている。これこそが地域コミュニティの原点であろう。

介護保険制度の導入がひとつのきっかけだったという。確かにこの制度が「介護地獄」と言われた家族で抱え込む介護から、特に女性家族を解放した意義は大きい。しかし一方で、「プロ」が家庭に入ることによって、それまでの近所づきあいのなかでの柔軟な「助け合い」のネットワークが寸断されてしまった。「おたがいさま」の「助け合い」を、もう一度、地域に取り戻す必要が生まれてきたのだ。

本書は具体的な事例を通じてその「解決策」への道筋をたどる。もっとも、その道筋はおそらく一通りではなく、100の地域があれば100通りのソリューションがある。本書は、それぞれの地域がその地域なりのコミュニティを形成するための「参考事例集」。まるごと真似しては意味がない。あくまでこれらをベースに、自分たちの地域を知り、その「必要」に即した仕組みをつくっていくことが大切だ。ただ、そのためのヒントであれば、この本にぎっしり詰まっている。活用しない手はない。そうすれば「ソーシャル・キャピタル」なんて、あとから自然と蓄積されてくるのである。