自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【845冊目】本谷有希子『あの子の考えることは変』

あの子の考えることは変

あの子の考えることは変

「妙な女の子二人」をめぐる、本谷節全開の小説。

特にヘンなのは日田。自分が獣臭いのではないかと悩み、清掃工場から出るダイオキシンが潜在的な悪を引きだすと信じ、コンパでは人前でゲロを吐き、ホームレスを犯す夢を見る。一方、日田のルームメイトの巡谷は、でかいおっぱいだけが取り柄で、ブチ切れると暴走し、セックスフレンドの「横ちん」を本カノから横取りしようと、ご飯の量を徐々に増やしてデブ化させようとしている。

こういう自意識過剰系の「ヘンな人」を書かせると、この人はやはりうまい。戯曲で鍛えた腕なのか、「ヘン」と思えるようなエピソードやセリフにいちいち説得力がある。そしてどこかで、こういう「ヘンな人」がいる(小説の中でだが)ことに安心している自分がいる。今の世の中、もっとヘンな人全開の人がたくさん巷にあふれていてもいい。

ストーリーらしいストーリーがあるわけではない。むしろキャラの迫力と会話のテンポで読ませる小説。しかし、その強烈なキャラの裏側に、ちらりと垣間見えるのは「自分」の断片。しかも、見たくない側の……。