自治体職員の読書ノート

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【825冊目】『おくのほそ道 芭蕉・蕪村・一茶名句集』

おくのほそ道 芭蕉・蕪村・一茶名句集 (日本の古典をよむ)

おくのほそ道 芭蕉・蕪村・一茶名句集 (日本の古典をよむ)

小学館の「日本の古典をよむ」シリーズ第20巻。明晰な現代語訳、読みやすいレイアウト、奇麗な装丁で、一見するととっつきづらい日本の古典に親しんでもらおうということらしく、古典入門にはなかなか良さそうなシリーズとなっている。

本書は芭蕉の『おくのほそ道』全文が前半、芭蕉・蕪村・一茶の主だった俳句を季節ごとに並べたものが後半となっている。芭蕉はともかく、蕪村や一茶についてはこれまでまとまった句集などを読んだことがなかったので、この組み合わせはありがたい。

『おくのほそ道』は以前読んだことがあるので流し読み。現代語訳が先にあり、その後に原文が続く。もっとも、既読のためもあってか、現代語訳が丁寧すぎてかえってかったるく感じた。途中からは原文を読んで、意味がとりづらいところだけ現代文を参照するやり方に切り替えた。芭蕉の文章は地の文でもかなり省略が効いているのだが、現代文のほうは、それを全部隙間を埋めるように解説してくれているので、親切ではあるのだが正直ちょっとうざったい。

後半は芭蕉・蕪村・一茶の句が解説つきで淡々と並んでいるのだが、本来はこういうものは、一気に通読するよりは、行きつ戻りつしながらついばむように句を読み、味わうほうが良いのだろう。特にここに並んでいるのはえり抜きの傑作ばかりであり、どんどん読んでいくのがかえってもったいなく感じる。まあ、本書は位置づけが入門用であるから、贅沢を言ってはならんのだろう。ちゃんとした句集に入っていくためのナビゲーションと思えばよい。

俳句を論じるのは野暮の極みと思うので、あとは個人的に惹かれた句、気になった句を、一人各季節一句ごとに挙げてみたい。超有名句もたくさんあるので、いくつかはご覧になったことがあると思う。の私のようにこれまで彼らの俳句にあまり触れてこなかった方で、どれかの句にピンとくるものがあるようなら、いずれは句集を手にとってみられてはいかがだろうか。

※「……」の後は一言コメント。

松尾芭蕉
【春】鶯や餅に糞する縁のさき……「糞」に驚いた。
【夏】頓(やが)て死ぬけしきは見えず蝉の声……無常とはこのことか。
【秋】夜るひそかに虫は月下の栗を穿つ……小さきものたちの音が際立たせる、月下の静寂。
【冬】明ぼのやしら魚しろきこと一寸……私の大好きな句です。

与謝蕪村
【春】菜の花や月は東に日は西に……蕪村の春は超名句揃いだが、スケールはこれが随一。
【夏】さみだれや大河を前に家二軒……これも絵画的なスケールの句。
【秋】鳥羽殿へ五六騎いそぐ野分哉……風を感じる一句。
【冬】待人の足音遠き落葉哉……恋する人を待つ一句。

小林一茶
【春】雪とけて村一ぱいの子ども哉……これも有名だが、やはり名句。
【夏】大の字に寝て涼しさよ淋しさよ……一茶は50代まで独身だった。
【秋】秋風やむしりたがりし赤い花……花を「むしりたがった」のは、痘瘡で死んだ一茶の長女。痛切。
【冬】雪車(そり)負うて坂を上るや小さい子……そり遊びを眺める一茶の温かい視線。