自治体職員の読書ノート

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【805冊目】林宜嗣『分権型地域再生のすすめ』

分権型地域再生のすすめ

分権型地域再生のすすめ

財政学の見地から書かれた地域再生論。

従来型の「国主導・土建型」の地方活性化から「分権型・内発型」へ移行することによる地域再生を論じる。類書の多い分野ではあるが、その中でも重要なトピックがバランスよく取り上げられ、しっかりしたデータを踏まえて、非常に丁寧に論じられているように思う。基本的には財政論に基づくものであるが、地方議会の問題や徴税の方法などにも目配りがなされている。

これまでの国土開発型の地域再生がすべてダメとまではいえないだろうが、少なくとも現状を見るに、実効性があがっているとはいいがたい。そもそも公共事業による土建業中心の地域開発に、これまではあまりにも頼りすぎていた。本来、公共事業は「モノを作る」ことが目的であり、建物や道路などの「モノ」が充足すれば、それに伴って減っていくのが道理である。しかし、実際には「仕事を生み出す」という元々の副次的効果がメインになり、いわば地方の建設業を存続させるために公共事業が行われてきた面がある。

もちろん、不況下の一時的なカンフル剤としてこうした公共事業を行うことには意味がある。しかし、その状況が構造化してしまい、不断に公共事業が行われないと地方が衰退するという図式ができあがってしまうとなると、それはまた別問題だ。第一に、右肩上がりに税収が伸びた高度成長期ならともかく、この停滞した経済状況下では永続的に税金を投入することは難しい。第二に、建設業という特定の業種に税金が流れ込み、しかもそのすべてが当該地方に還元されるとは限らない。第三に、道路ができてもストロー効果でかえって地域の住民が地域外に流出し、環境の破壊によって地域の魅力が減退し、結果として地域活性化には逆効果となる。

こうした図式を断ち切るための方法を、本書はピンポイントで教えてくれるわけではない。むしろ、判断に必要なデータや諸条件をわかりやすく提示し、地域ごとに解決策を見出すこと自体を重視しているように感じた。実際、分権型地域再生のはじめの一歩は、地域の人々が自ら考え、地域をデザインしていくところから始まるべきなのだと思う。その前提となる条件(地方税に対する要件緩和や交付税の一般化・充実など)を整えることが国の役割であるはずであり、現在のように主人ヅラしてこと細かく口を出してくるのは論外であろう。