自治体職員の読書ノート

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【791冊目】柳川善郎『襲われて』

襲われて―産廃の闇、自治の光

襲われて―産廃の闇、自治の光

あけましておめでとうございます。拙い読書ノートではございますが、今後ともご愛顧のほどよろしくお願いします。

さて、本年1冊目は、正月早々ちとヘビーな本。産廃処分場建設をめぐって襲撃を受け、重傷を負った元御嵩町長による闘争の記録だ。襲撃事件だけでなく、産廃処分場建設をめぐる一連の流れから有名になった住民投票への流れまでをバランスよく書き込み、環境問題、地方分権、住民自治、民主主義といった重いテーマを織り込みつつ、迫力満点で読みやすい一冊に仕上がっている。

構成から文章まで、単なる元政治家にしては異常にうまいと思ったら、著者は元NHK出身で、むしろメディア関係出身なのであった。まあ、だからこそこの産廃処分場計画とここまで「戦えた」ということはあるのだろう。しがらみがたくさんある地元出身の政治家だったら、こうはいかなかったと思われる。その意味でも、この時期に御嵩町がこの町長を迎えることができたのは幸運であった。

それにしても、産廃問題をめぐる闇の深さは想像を絶している。いわゆるアウトローの連中はともかく、ひどいのは許可権限をもつ岐阜県である。国定公園内への産廃処分場建設に関する環境庁の通知を隠し、通常の手続きを枉げてまで業者側に「配慮」し、しかも業者の代理人のようにあからさまに町に圧力をかけてくる。梶原知事という人がどの程度の政治家なのかよく知らないが、本書を読む限り、最低の知事と言わざるをえない。

産廃をめぐる闇については、ずいぶん前に別の本を紹介したことがある(18冊目『狙われた自治体』)。こちらは職員の命が奪われるという最悪のケースであったが、やはり業者側と行政側が結託して不正を行い、正義を貫こうとした心ある職員が犠牲となるという点で本書のケースとよく似ている。本書の場合は幸いにして命を取り留めたこと、一職員ではなく町長という立場であったことが、事態の展開を大きく変えたが、やはり一つ間違えば・・・と思うと恐ろしい。

なお、本書は住民投票に関するすぐれたテキストでもある。なにしろ実施者が書いているのだから、説得力がある。印象的なのは、投票日が近づくにつれて周囲のマスコミや推進派団体(県も含めて)は大騒ぎしているのに、住民の動きはかえって鎮静化して、落ち着いてきたというくだり。住民投票には、その自治体の住民自身の資質がバレてしまうという性質があるように思うのだが、その点では御嵩町の住民の政治的成熟性は驚くべきレベル。以前は「モノ言えば唇寒し」だったというから、それを変えようとしてきた町長の努力の成果が、ここに現れたというべきだろう。

環境と産業の問題、日本の裏社会の深さと怖さ、県のていたらくと対照的な住民自治の可能性など、今の日本の抱える「闇と光」を濃縮して一篇のノンフィクションとした好著。お勧めである。