自治体職員の読書ノート

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【788冊目】礒崎陽輔『分かりやすい公用文の書き方』

分かりやすい公用文の書き方―常用漢字表を収録

分かりやすい公用文の書き方―常用漢字表を収録

正確に、誤解のないように、内容がきちんと伝わるように書いているはずなのに、読み手にとっては分かりにくい文章の代名詞。その典型例が法律であり、本書のテーマである公用文である、と言ったら言い過ぎだろうか。

誤解のないように付け加えておくと、本書は「分かりやすく読みやすい」公用文の書き方を指南するものではない。むしろそれ以前の、「正しい」公用文のルールとスタイルとはどのようなものかを解説するものだ。もっとも、全国共通の「絶対的に正しい」公用文の書き方というものは、実はないと思ってよい。もちろん大枠の、原則部分は共通だが、細部は国の機関や自治体ごとでかなりのばらつきがみられる。本書もそのことは十分承知の上で、あえてひとつの「範例」として、著者の考える「正しい公用文のあり方」を提示しているのであって、唯一絶対の基準を示したものではない。

それでも本書には参考になる点が多い。自治体職員の多くが漠然と、あるいは感覚的に、あるいは迷いながら作成していた公用文に、ひとつの指針を示している。漢字の使い方(それにしても、常用漢字表はどうしてあんなに出来が悪いのだろう?)、的確な句読点の打ち方や送り仮名のつけかた、主語と述語の対応など、本当に基本中の基本から丁寧に、具体的に示している。こうしたルールは、以前は先輩職員がオン・ザ・ジョブで教えていた部分なのだろうが、今ではなかなかそういう「おせっかいな」職員はいない。パソコンの普及で、新たにゼロから文書を起こすことが少なくなったことも影響しているような気がする。以前の文書をコピー&ペーストして必要部分をちょちょっと手直しするだけ、というやり方をしていると、自前で文書をつくれなくなってしまうのかもしれない。

本書は公用文に対するひとつの指針であり、手引きであるが、同時に日本語の基本練習にもなっており、公用文に限らず応用できる。面白いのは各章末についている「間違いを探せ!」という設問コーナー。間違えやすい用語や用例を実にうまく集めてクイズ形式に料理しており、これだけでもなかなか勉強になった。それにしても、「正しい公用文」が同時に「分かりやすく、読みやすい公用文」になるためには、どうすればよいのだろうか。正しいルールとスタイルで公用文が書けても、それで終わりではないのである。