自治体職員の読書ノート

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【757冊目】パウロ・コエーリョ『アルケミスト』

アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア)

アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア)

神父の息子サンチャゴは、世界を旅するため羊飼いになり、いろいろなところを旅してまわっていた。1週間前と同じ夢を見たサンチャゴは、占い師の老女にその夢を解釈してもらう。老女が告げたのは、少年はエジプトのピラミッドに行き、そこで宝物を見つけて大金持ちになるだろう、というもの。少年はその言葉を信じてアフリカに渡り、砂漠を越える旅に出る……。

ブラジルの作家パウロ・コエーリョの代表作であり、世界的なベストセラーになった寓話的な物語。夢を追うことの大切さを訴える本として、自己啓発書として読む人が多いらしい……が、私はちょっと別の読み方をした。

まず、サンチャゴにとっての「夢」とは何か、ということ。確かに、彼はピラミッドの近くにある宝物を求めて旅に出る。しかし、彼はもともと宝物を求めて旅に出たのではなく、夢の啓示を解釈した結果として、占い師の老女に「告げられた」目標を追っただけ。夢という言葉の意味が「眠っている間に見る夢」ということなら、確かにサンチャゴは夢を追っている。しかし、「人生の目標」といったような意味合いで使われる「夢」ということなら、本書での意味合いはちょっと違うように思う。

むしろ本書で示されているのは、世界が自分に示す「前兆」をしっかりと汲み取り、世界が自分に向けて発するメッセージを大切にすべし、ということであるように思う。同じ夢を続けて見ることにはじまり、砂漠でのいろいろな現象から意味を読み取り、解釈することで、サンチャゴは世界と一体化し、世界の「大いなる意志」とシンクロする。その結果が、クライマックスシーンである「少年が風になる」場面。あれはまさに、自然と交信し、同一化するプロセスであろう。

本書で書かれているのは、目標を追うことの大切さ、というよりは、世界に身を委ね、そのメッセージを聞き取ることの大切さ、ということであるように思う。「すべては書かれている」とも、本書にはある。単なる「成功本」「わき目も振らず目標に邁進することを薦める本」として本書を読むことは、誤読であろう。もっとも、もう少しコエーリョの本を読んでみないと、本書の本質は見えてこないのかな、とも感じる。『星の王子さま』(本書と「似ている」と言う人が多いらしい)だけではサン=テグジュペリのことなんか何もわからないのと、同じようなものだろうか。