自治体職員の読書ノート

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【710冊目】『古事記』

古事記 (日本の古典をよむ 1)

古事記 (日本の古典をよむ 1)

小学館から刊行の「日本の古典をよむ」シリーズの第1巻。ある程度のユニットごとに現代語訳→原文という並びで書かれ、主だった古典文学を読みやすくダイジェスト化している。ダイジェストといっても、この『古事記』に関して言えば、主な部分はきちんと網羅されており、かつ全体の流れが分かるように工夫されている。

いわゆる「古典」に興味はあってもなかなかとっつきづらい、という人は多いのではないかと思う。私もその一人で、なんとなく気になってはいても、いきなり古文調でずらずら〜っと文字が並び、びっちり注釈がつけられたりしていると、それだけでなんだかおそれをなしてしまう。しかも、そうしたスタイルだと私のような浅学非才の人間では意味を読み解くのが精一杯で、内容を味わう余裕など持ちたくても持てない。英文で小説を読んで、意味はどうにか分かっても「感動する」のは難しいのに似ている。

その点、角川文庫の「ビギナーズ・クラシックス」シリーズや、この小学館「日本の古典をよむ」シリーズはありがたい。現代語で意味をつかみ、そのすぐ後に出てくる古文で文章を味わうこともできる。あとは、「古典を読んだ」という見栄を取るかどうかの問題だが、別に自己満足のために読むわけじゃないから良いのである。スキーだって最初は初心者コースで、上達したら上級者コースに移るではないか。初心者なのに無理してリフトのてっぺんまで登ったって、ろくなことはないのである。

古事記』そのものについては、今更書くほどのこともない。ただ、これまでは「神話」「物語」として読んできたものが、今回はそのウラに実際の歴史の動きを感じながら読むことができた。『古事記』自体は、子どものころに子ども向けの本を読んだり、大人になってからも何回かは(別のバージョンで)読んでいるが、大和と出雲の対立と屈服、朝鮮半島とのかかわりなど、実際の史実はどうだったのだろうか、ということを意識しつつ読んだのは今回がはじめてだった。また、戦いのほとんどが計略や騙しによって解決していることも今回気付いた。日本の神様やその子孫は、なかなか「狡猾な」戦い方を心得ていたのである(太平洋戦争で作戦を遂行した軍部は、神国日本を謳うわりには古事記を読まなかったのであろう)。