自治体職員の読書ノート

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【709冊目】森浩一・網野善彦『日本史への挑戦 「関東学」の創造をめざして』

日本史への挑戦―「関東学」の創造をめざして (ちくま学芸文庫)

日本史への挑戦―「関東学」の創造をめざして (ちくま学芸文庫)

古代〜中世の「日本史」といえば、たいてい近畿エリア中心のものと相場がきまっている。奈良や京都が「国の中心」で、関東など、鎌倉幕府がひらかれるまでは「鄙の地」「田舎」にすぎないものとされてきた。だが、果たしてその見方は妥当なのか。本書はそれに異を唱え、関東エリアにも古代から産業や文化があり、近畿エリアに匹敵する「進んだ」地域であったことを明らかにする。

本書は、考古学者の森浩一氏と、主として日本の中世史を研究する網野善彦氏の対談形式で進んでいく。いずれも、既存の歴史観に対して非常にラディカルな発想をお持ちの方であり、その両者の対談であるから「日本史への挑戦」というもじどおりチャレンジングなタイトルになったのもうなずける。

特に、海上交易の視点から関東エリアの発展を読み解くあたりが個人的には面白かった。このあたりはまさしく網野氏の十八番のテーマであるが、農民ばかりに着目する従来の研究結果を批判し、関東と近畿の間で古来より活発な海上交易が行われていたことを明らかにし、流動的でダイナミックな日本史観によって関東の歴史をどんどん見直していくさまは痛快ですらある。

なお、本書でも示唆されているが、こうした歴史観というのは関東以外でも当然成り立ちうるところであり、日本各地でこうした試みが広がることで、平面的で単一的な日本史がどんどん多面複合的になっていくと思われる。その際にカギとなるのも、やはりそれぞれの地域を結ぶ「交易」、特に海上交易の状況であろう。さらに、そこに朝鮮や中国などとの地域レベルでのかかわりが入ってくると、また面白くなってくる。特に各地域の地方大学や自治体あたりを軸に、こうした研究がどんどん行われてほしいものである。