自治体職員の読書ノート

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【708冊目】上山信一・大阪市役所『行政の経営分析』

行政の経営分析―大阪市の挑戦

行政の経営分析―大阪市の挑戦

同じ自治体職員として、2005年秋に「発覚」した大阪市役所の職員厚遇問題は強烈だった。カラ残業にはじまり、明らかに行き過ぎた福利厚生、組合のヤミ専従、巨額の裏金など、まさに問題のオンパレード。組合、市当局、市会の三者がべったりと癒着して、どうにもならないところまできていた。

マスコミに叩かれたのは、そんな事態を打開するにはかえってよかったのかもしれない。とことんまで世論に追い詰められることで、思い切った大手術を行うことができた。執刀医となったのは「改革屋」を名乗る上山信一氏。本書は、市政改革の核となった経営分析の内容を、上山氏と大阪市のメンバーが中心となってまとめた一冊である。

役所の業務内容を分析・評価する際に良く使われるのが「事務事業評価」であるが、大阪市はこの方法をとらなかった。代わりに採用したのが、細かい個々の事業ではなく、一連の事務事業のカタマリを「事業ユニット」として取り出し、これを分析対象とする手法であった。大阪市が対象とした事業ユニットは67。本書では、そのうち「ごみ収集」「市営バス」「消防」「市営住宅」「広聴、広報・報道対応」「下水道」「市街地整備」「施設・ファシリティマネジメント」「市民病院」「国民健康保険」の10ユニットを対象に、実際に行われた分析内容を紹介している。

いずれもかなり突っ込んだ現状分析と抜本的な改革案が提示されており、大阪市を対象とした分析内容ながら、他の自治体の同事業担当者がみても参考になること請け合いである。また、国の制度や社会状況のせいにするのは簡単だが、あくまで当事者としての自治体ができることに絞って前向きに考えているところも良い。個人的に面白いなと思ったのは「施設・ファシリティマネジメント」。自治体の有する「資産」を管理するという視点から、自治体施設の管理や運営を扱っており、公会計制度の内容を先取りするものとなっている。一見すると施設管理というテーマはヒジョーに地味だが、実はものすごく重要であることがよくわかる。

こうした改革の前段として、福利制度の是正や組合との関係の見直しがあったことはもちろんである。その内容自体は本書では触れられていないが、察するに、ポイントは情報公開を徹底的にすすめたという点にあるらしい。これは三重県行政改革でも同じだったと思うが、不祥事や問題が発覚し、それがバッシングされるということは、職員にとってはつらいことであるが、うまくジャンピングボードとして使えば、これほどのチャンスもない。三重県大阪市が思い切った改革を行うことができたのは、バッシングの中で単に身を縮めてやりすごそうとするのではなく、それを利用した改革者側のしたたかさがあったと言えるかもしれない。