自治体職員の読書ノート

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【704冊目】高取正男『神道の成立』

神道の成立 (平凡社ライブラリー)

神道の成立 (平凡社ライブラリー)

古代から平安期ころまでの日本の歴史から、「神道」の成り立ちをたどる本。もっとも、各章はもともと別の論文であり、必ずしも「日本神道史」のようにはなっていない。

前半は、主に天皇を中心とする宮廷の祭儀や政治過程のなかから、神道的な儀式や思考様式を見出していく。特にメインとなるのが、仏教との濃密で複雑なかかわり。蘇我氏物部氏の争いに象徴されるように、そもそも仏教をどう受け入れるか、あるいは排除するかというテーマは古代日本をつらぬく大問題であり、神道は最初から仏教と向き合わざるを得ない宿命を負っていた。

私自身は漠然と、最初に自然発生的なかたちで神道が生まれ、後から仏教が入ってきたように思っていたが、実はそうではないようなのである。これはあとがきで書かれていたのだが、文献上さいしょに「神道」という言葉が登場するのは日本書紀であって、それはこういう記述であった。「信仏法、尊神道」(用命天皇)、「尊仏法、軽神道」(孝徳天皇)。ここでわかるのは、神道という言葉がいわば仏法(=仏教)と「対になって」つかわれていること、そして仏法が「信」「尊」とされているのに対し、神道は「尊」「軽」とされ、むしろ確固たる仏法の立場にくらべて神道のほうが揺れ動いていること。

また、これもあとがきから見つけたのだが、神道という言葉自体、もともとは中国の儒家や道家が用いていたものであるらしい。それをいわば「輸入」して、それまで自然発生的に存在していた信仰をいわば「枠付け」したのは、やはり仏教に対抗して自分たちの神というものを名づけざるを得なかったということだと思われる。そうでなければ、わざわざそれを「名づける」必要がないのだから。

こうした内容は本書のほんの一部であり、他にも宮廷の祭儀だけではなく、民衆の宗教観念(特に「死」と「ケガレ」をめぐる概念)にも目を配って民俗学的なアプローチからも神道の成立に迫っており、非常に面白い。個人的には、奈良・平安あたりの宮廷事情に関する部分は基礎知識が全然足りなくてなかなか話の筋道が見えなかったが、後半の「物忌み」のあたりからどんどん面白くなってきた。もうちょっと勉強してから前半を読めば、またいろいろ発見がありそうである。