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自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【552冊目】出井信夫「指定管理者制度」【553冊目】三野靖「指定管理者制度」【554冊目】地域協働型マネジメント研究会「指定管理者制度ハンドブック」

指定管理者制度

指定管理者制度

指定管理者制度―自治体施設を条例で変える

指定管理者制度―自治体施設を条例で変える

指定管理者制度ハンドブック

指定管理者制度ハンドブック

うちの近所の公営スポーツセンターは、某大手フィットネスクラブが指定管理者となっている。会社のカラーと施設の雰囲気がずいぶんミスマッチなのだが、フィットネスや水泳教室などの企画は、素人目にもなかなか充実している。実は、ウチの子供もそこの幼児向けスイミングスクールに通わせていただいている。格安のお試しコースのようなものだが、教え方がうまいうえに、できることに応じて級が上がり、バッチがもらえる(顔を水につけられたら「イカさんコース」、とか)ので、近所のお母さんたちにはけっこう人気があった。

ところが4月から、そのスポーツセンターには別の会社が入ることになったという。近所のお母さんたちはびっくりである。もちろん、みなさん指定管理者制度のことなどご存じない。そこはそのフィットネスクラブが運営している施設なんだとハナから思い込んでいるから、何が起こったのかさっぱり分からない。倒産したのか、採算が悪くて撤退したのか、などと噂ばかりが飛び交っている。地元自治体のホームページや施設に置いてあるペーパーで説明はされているのだが、指定管理者がどうのこうの、と書いてあっても普通の住民にはチンプンカンプンである。4月以降に指定管理者となる会社の名前はあるものの4月で何がどう変わるのか、4月からはどんな事業をやるのか、まるっきりわからない。

だが、とにかく今の会社で今の事業をやるのは3月まで、ということだけは分かっている。わが子が取得したささやかなバッチもあと少しで使えなくなる、ということも。皆さん困惑顔ながら、4月まで待っていても仕方がないということで、近所の別のスイミングスクール(自治体の施設じゃないところ)に移ってしまった。やや遠くなるが、値段はそちらのほうがややリーズナブルなので、悪い話ばかりじゃない。

そうか、そういうことか、と思った。指定管理者制度の本はこれまでいろいろ読んだが、行政側、あるいは施設運営者サイドの発想のものしか出会ったことはなかった。今回読んだ3冊も同じ。というか、利用者サイドに立った指定管理者の本なんて、お目にかかったこともない。指定管理者制度という制度のフレームの中で、実は利用者のことを正面から考えた論考はほとんどないともいえる。せいぜい、施設利用者の満足度が、指定管理者への評価項目として取り上げられるくらいである。

これって考えてみれば妙な話だ。利用者である住民こそ、本来は「公の施設」の主役ではないのか。施設管理・施設運営のあるべき姿は、まず利用者サイドからこそ考えられなければならないのではないか。

住民というタームが指定管理者をめぐって登場するのは、せいぜい指定管理者として施設を運営する主体として、でしかない。あとはひたすら、効率性と「民間のノウハウによるサービスの向上」の決まり文句ばかり。いや、サービスの向上が利用者サイドのことを考えているのだ、と言われればそうかもしれないが、そうであるならば、3年ごとにコロコロ運営者が変わるスポーツ施設というのはどうなのか(正確には、指定期間は何年でも良いのだが、実際にこの制度で数十年の指定期間を確保することは難しい)。

施設の貸し出しだけやっているなら良いが、指導者を招いて実施するスポーツ事業のように、ある程度長期的なスパンで行う事業もある。そういう事業まで数年で仕切り直しにするというこの制度構造自体、「サービス」という点から見ると問題であるように思う。

文化施設でも同じである。いや、継続性という点では文化事業のほうが重要かもしれない。地域と密着した活動、利用者育成型の活動などは特に、長い間の積み重ねがなければ花開かないものが多い。しかし、指定の多くはせいぜい3年から5年。それでは、そもそも長期的なスパンでの事業をやろうという意欲が湧かないし、やったとしても成果が出る前に次の選定となってしまうのだから、その事業自体が評価に結び付くことはない。

指定管理者を短期間で変えること、あるいは結果的に変えないとしても評価・選定を繰り返すという制度設計そのものは、はたして適切なのであろうか。民間のノウハウを活用するというが、「民間」の運営する施設自体、たとえばフィットネスクラブであれば、自前の施設で自前の事業を展開するのが通常の形態であり、経営不振で結果的に施設を閉鎖することはあるだろうが、最初から「数年後には変わるかもしれない」などという前提を組み込んで施設をつくるという発想はありえない。むしろ、広告やCMなどで初期投資を行い、実績を積むなかで時間をかけて自社のブランドイメージを浸透させ、固定客をつかむことで初期投資を回収するのがこの種の業態の経営では常道であろう。その点を無視して「民間のノウハウで」「民間の発想で」ということ自体、ナンセンスであると思う。

民間事業者が公の施設を運営すること自体に、私は反対するものではない。しかし、施設の性質にもよるが、やるならもっと長い目でやるべきだというのが私の考えである。むしろ、30年くらいのスパンで事業をとらえるPFIの手法こそ、もっと活用されて良いと思う。今回読んだ3冊とはあまり関係のない内容となってしまったが、思いつきのままダラダラと書いてしまった。