自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【516冊目】マルコム・グラッドウェル「第1感」

第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい

第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい

たとえば、科学的な鑑定法では古代ギリシャのものと判断された彫刻を、専門家は一目で偽物と見抜く。ほんの数分の夫婦の会話から、彼らが将来離婚するかどうかを見抜くこともできる。そういう事例が、本書にはふんだんに取り上げられている。

その結果導き出されるのは、「膨大なデータの積み上げや論理的思考より、最初の2秒で感じたことが正しい」という驚くべき結論である。ただし、注意しなければならないのは、それが「プロ」「専門家」にとっての直観であるという点だ。彼らは、それまでの膨大な知識と経験を元に、少ない情報でも無意識のうちに的確に判断することができる。そのことを本書では、状況を「輪切り」にすると表現する。うまい表現である。

ただし、こうした見方がいつでも通用するわけではない。一方で、世の中には、誤った直観や思い込みがあふれかえっている。本書がすぐれているのは、こうした「偽りの第1感」についても、かなりのページを割いている点だと思う。そこで見られるのは、思い込みが視野を狭め、判断をゆがめるという危険性である。ニューヨークで一人の黒人が警官により誤って射殺された事例が、そのおそろしさを伝えている。

つまり本書が一貫して扱っているのは、意識にのぼらない無意識下の心の作用である。最も印象的だったのは、潜在連想テストという、いわば無意識の連想の果たす役割を試す心理テストであった。一連の単語を2つあるカテゴリーのどちらかにどんどん分類していくだけのテストなのだが、これが無意識の作用というものを本当に情け容赦なく暴いてくれる。どういうものか知りたい方は、こちら