自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【508冊目】木下敏之「なぜ、改革は必ず失敗するのか」

なぜ、改革は必ず失敗するのか-自治体の「経営」を診断する

なぜ、改革は必ず失敗するのか-自治体の「経営」を診断する

著者は元佐賀市長で、若干39歳での当選後にさまざまな改革に取り組むものの、2期6年半を務めた後、合併に伴う新佐賀市長選で落選。本書の前半部分は、自身が市長時代に取り組んだ改革について、成功、失敗とりまぜて語っている。

民営化、ハコモノ抑制、コストカットなど、取り組んだ内容は「改革派首長」の見本のようなものだが、成功例はともかく面白い(と言ったら不謹慎だが)のは失敗例の総括。やや愚痴めいている部分もあるが、議会との関係や段取りの失敗、多くの軋轢や障害との闘いなど、「改革が失敗するメカニズム」を浮き彫りにしており興味深い。その当否はともかくとして、首長としてどのような政策を思いつき、どうやって行動に移すのかといった事情を詳細に明かしているため、職員サイドからはなかなかみえない首長の視点を窺うこともできる。

後半は、夕張の現状や首都圏の抱える問題などを著者ならではの見方で分析しており、こちらもなかなか面白い。特に夕張の、国道の表通りはきれいだが、裏通り(市道)に行くと、破損部分を直すことができないため土嚢が置いてあった、という部分は印象的。また、村上医師の存在で有名になった夕張の医療事情も、全国の特に地方医療が抱える問題や解決法を端的に示しているようで参考になった。