自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【490冊目】「自治体人材育成の着眼点」

自治体人材育成の着眼点 (地方自治ジャーナルブックレット)

自治体人材育成の着眼点 (地方自治ジャーナルブックレット)

  • 作者: 浦野秀一,野田邦弘,田中富雄,西村浩,杉谷知也,三関浩司,井澤壽美子,坂口正治
  • 出版社/メーカー: 公人の友社
  • 発売日: 2007/03/01
  • メディア: 単行本
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表題どおり、自治体の「人材育成」に焦点をあてた一冊。

行政やまちづくりの現場の人々が主な書き手であり、実際に現場で求められる職員像が、多角的に描写されている。中でも多く論及されているのは、住民と共に考え、共に行動する、いわば「協働型」の職員である。その背景には、従来の「行政主導型」の職員では、現在の行政現場には対応できなくなってきているという冷厳な現実があるように思われる。特に、研修を立案する部門は自治体の中でもいわゆる「官房系」「総務系」に属することが多く、行政現場の最前線における研修ニーズとのミスマッチがあるのかもしれない。

薄い本ながら内容は充実しているが、特に印象に残ったのは、「ナレッジワーカーからコンセプターへ」という一文であった。ここでいう「ナレッジワーカー」とは、著者の野田邦弘氏によれば「断片的な知識を切り売り」するだけの人々であり、知識労働者全体が不要になるということではない。むしろ、重要なのは「コンセプター」のほうであろう。これは「ハイ・コンセプト」すなわち「新たなコンセプトを創出する創造力を有する人」であり、また「ハイ・タッチ」、すなわち高いセンスと感度を有する人を言う。知識や情報の重要性のみならず、地域課題を敏感に捉え、創造力をもって解決にあたる資質こそが、今の自治体職員に最も求められているということであろう。